刑法総論

酒豪女と息子と旦那

■ 事例 A女は酒癖が悪く、酒は好きだが、いったん飲みだすとブレーキが利かず、男に暴力を振るったり、ちょっかいを出すなどを繰り返してきた。このため、前夫との結婚は、息子Bが生まれたものの、うまくいかず、結局破綻し、離婚してしまった。 そんなA女に…

共犯の諸問題

共犯と身分 ○身分 ★最判昭和27・9・19 身分は、男女の性別、内外国人の別、親族の関係、公務員たるの資格のような関係のみに限らず、総て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称する・・・ ⊃営利の目的? ・構成的身分→真正身…

未遂

●意義 犯罪の実行に着手し,これを遂げなかった場合(刑法1編8章)。 ○狭義の未遂犯 =障害未遂 ○中止犯 =中止未遂 ▲要件 △実行の着手 △構成要件的結果の不発生 中止犯 ・▲要件 △実行の着手 △自己の意思により=任意に △犯罪を中止した △結果の不発生 ・予…

構成要件的過失

●意義 故意がないが,注意義務違反があること。 ○注意義務 =客観的注意義務 客観的=一般的 ○業務上過失 ○重大な過失 具体例 ★「自動車事故」最決平5・10・12百選53 <事実> 被告人は自動車の運転中,交差点のちょっと前で,後部座席の妻を下ろそうとした…

錯誤

○事実の錯誤 :行為者の認識した犯罪事実と,発生した犯罪事実に食い違いがある場合。 故意が阻却される。 ○法律の錯誤 :許されると思った事実が,実は許されない犯罪事実である場合。 故意は阻却されない(刑法38条3項)。 判例は,不要とする。 ★「警察に…

原因において自由な行為

●意義 自らが自由な原因行為によって,心神喪失等の状態で結果行為を惹起すること。 行為・責任同時存在原則に対応する実行行為認定の理論構成が課題。 ?実行行為はいつなのか 原因行為をなした時点である。原因行為をなした時点には,責任能力があるのだか…

構成要件的故意

●意義 構成要件の主観的要素。 認識的要素と意思的要素からなる。 @客観的構成要件要素 @規範的構成要件要素 一般人基準の意味認識 ○確定的故意 ○不確定的故意 ・概括的故意 ・択一的故意 ・未必の故意 ・条件付故意 ○ウェーバーの概括的故意 :全過程に対…

緊急避難

●意義 現在の危難を避けるため,やむを得ずにする行為で,生じた害が避けようとした害の程度を超えなかったもの(刑法37条)。 社会的相当性が,根拠となる。 ▲要件 △現在の危難 ⊃他人の危難 ・狭義の誤想避難 △を避けるため =意思 △やむをえずにした行為 …

正当防衛

●意義 構成要件には該当するが,違法性の阻却される緊急行為の中の防衛行為(刑法36条,「緊急は法を持たない」)。 ▲要件 1 △急迫不正の侵害 1) 急迫 ★「侵害の急迫性」最決昭52・7・21百選22 <事実> 中核派の学生らが集会を開こうとしていると,対立関…

正当行為

●意義 違法性阻却事由となる正当防衛・緊急避難以外の法令・業務・その他行為(35条)。 ○法令行為 ex.警察官による被疑者の逮捕(刑訴法199条),親権者の懲戒(民法822条) ○正当業務行為 ex.格闘技,取材活動 その他の正当行為 1 労働争議行為 労働者が…

因果関係

●意義 実行行為と結果との間に存在する関係。 判断方法 1 条件関係の存在 =「あれなければこれなし」 1) 因果関係の断絶 ≠中断 2) 合義務的な択一的挙動 処理方法=実行行為性がない 3) 択一的競合 A∪B =どっちかよくわからない 価値判断により条件公…

実行行為

●意義 特定の構成要件に該当する,法益侵害の現実的危険性を有する行為。 不作為犯 ●意義 1) ○真正不作為犯 2) ○不真正不作為犯 ▲要件@不真正不作為犯 1) △作為義務の存在 =法的な作為義務の存在→保障人的地位にあること 2) △作為の容易性・可能性 作…

構成要件

●意義 処罰に値する違法・有責な行為の類型。 ○基本的構成要件 ↑↓ ○修正された構成要件 :未遂,共犯 ○閉じられた構成要件 ↑↓ ○開かれた構成要件 :適用にあたって裁判官の補充が予定されているもの ○記述的構成要件要素 ↑↓ ○規範的構成要件要素 :要価値判…

刑罰

●意義 犯罪に対する法律上の効果として,行為者に対して科される法益剥奪処分(9〜21条)。 種類 <生命刑> ・死刑(11条) <自由刑> ・懲役(12条) ・禁錮(13条) ・拘留(16条) <財産刑> ・罰金・科料(15,17条) 完納できなければ→労役場留置(1…

幇助犯

●意義 すでに犯意を有する正犯の実行行為を,実行行為以外の行為で容易にすること(62・63条)。 ▲要件 △①正犯を幇助すること 実行を容易にすればよく,有形・無形・物理的・精神的・・・問わない 「男は,やるときはやらねばならぬ」←幇助(大判昭7・6・14…

教唆犯

●意義 人をそそのかして,犯罪を実行させること(61条)。 ⊃間接教唆(2項) ▲要件 △①人を教唆すること 教唆の意思→教唆行為 △②教唆された者が犯罪を実行すること 教唆に“因って”実行すること 単に意思を強固にしただけでは従犯である(大判大6・5・25) ?…

共犯(総説)

●意義 ○最広義 ⊃必要的共犯:集団犯+対向犯 ⊃○広義:任意的共犯 ⊃共同正犯 ⊃○狭義:教唆犯+幇助犯 ?問題点 1)処罰根拠 ?共犯者は正犯ではないのに,なぜ処罰されるのか →正犯ではなくとも,間接的に法益を侵害したからである。 2)従属性 ?正犯が実行…

共同正犯

●意義 2人以上のものが共同意思のもとに,共同して実行行為を行うこと(60条)。 ≠同時犯 ▲要件 1 △共同実行の意思(主観的要件) =共同者全員が仲間の行為を利用・補充して実行する意思 ⊃暗黙の意思 ⊃順次共謀 必ずしも全員が同時に共謀する必要はない A…

罪数論

●意義 犯罪の数の処理。 一罪 ・単純一罪(認識上一罪):1個の構成要件に1回該当 ・評価上一罪:単純一罪が複数存在するが一罪 ・法条競合:一見1個の行為が複数の構成要件に該当するが,構成要件相互の関係で,1個の構成要件にしか該当しない。 ・特別関係…