緊急避難

  • ●意義

現在の危難を避けるため,やむを得ずにする行為で,生じた害が避けようとした害の程度を超えなかったもの(刑法37条)。
社会的相当性が,根拠となる。


  • ▲要件

△現在の危難
   ⊃他人の危難
   ・狭義の誤想避難


△を避けるため
   =意思


△やむをえずにした行為
   =補充性


法益均衡
   生じた害<避けようとした害
   ・過剰避難

★「新しい橋がほしいの」最判昭35・2・4百選27
<事実>
村の吊橋が老朽化により通行の危険が生じた,と考えた被告人らは,村の役人に再三架け替えを要求したが取り合ってもらえず,しょうがない,橋を爆破して強制的に架け替えさせようと計画,ダイナマイトで吊橋を爆破。
<判断>
この吊橋は馬車が通るには危険だったが,人が通るには安全だったから,危険が切迫したものではなかったのではないかと考えられる。仮に,危険が切迫したものだったとしても,そのほかの方法が考えられた。したがって,緊急避難も,過剰避難も成立しない。

   ・過失の過剰避難
   ・誤想過剰避難


  • ?問題点

自招危難
   全体として,社会的相当性を有するかを,実質的個別的に判断


過失行為による緊急避難


強要による緊急避難
   :誘拐犯「子どもを返してほしくば,銀行強盗をしてこい」

?認められるか
これを認めれば,どこまでも強要による緊急避難が拡大してしまう。たとえば,子どもを返してほしいと願う父親が,銀行強盗をすることが緊急避難として肯定されれば,今度は,その銀行に緊急避難が認められなければならない。無限の連鎖を生み出してしまうため,強要による緊急避難は認められないだろう。期待可能性の欠如として,責任の場面で処理すべきである。