因果関係
- ●意義
実行行為と結果との間に存在する関係。
- 判断方法
1 条件関係の存在
=「あれなければこれなし」
1) 因果関係の断絶
≠中断
2) 合義務的な択一的挙動
処理方法=実行行為性がない
3) 択一的競合
A∪B
=どっちかよくわからない
価値判断により条件公式を修正
→すべての条件を除けば結果が発生しないなら,すべての条件に因果関係を認める
4) 重畳的因果関係
A∩B
相当因果関係が否定されることはありうる
5) 疫学的因果関係
↑完全であるとはいえない
→高度の蓋然性がある場合に限り,条件関係を認める
6) 不作為の因果関係
「あれなければこれなし」を修正↓
「¬あれなければ¬これなし」
=あれ(期待された作為)があれば,これ(期待された結果)があっただろう
2 相当性が認められる
=相当因果関係
↑判断基礎;行為者の事情∪一般人の事情
↑批判;犯人のたまたまの知悉次第で因果関係が左右されるべきでない
→客観的事情(科学的一般人)によるべきである
★「心臓病」最判昭46・6・17百選Ⅰ9
<事実>
被告人は当時63歳の被害者Aから金員を強奪しようと考え,口をふさぎ,布団をかぶせるなどの暴行を行い,Aを急性心臓死で死亡させた。1審は因果関係を肯定したが,原審はたまたま被害者に高度の心臓病変があり,このことは家族や担当医も知らなかったのだから,被告人が知りうる筋合いではないとして,折衷的相当因果関係説の立場から,暴行と死亡との因果関係を否定。
<判断>
暴行が唯一の原因ではないとしても,たまたま存在した被害者の病変とあいまって死亡の結果が生じた場合,これに因果関係を認める余地はある。たとえ,それが特殊な事情であり,しかも,被告人がそれを知らず,また,予見できなかったとしても,同様である。
<整理>
条件説ではないが,条件説的である。
1) 相当性
=条件関係を前提とし,社会生活上の経験則に照らし,結果・行為の関係を認める
∵行為者に帰属せしめるのが相当かどうかを,刑法的評価を加えて判断するのが相当
2) 行為後の介在事情
妥当性判断の見地からの判断基準↓
①実行行為に存在する結果発生の確率の大小
②介在事情の異常性の大小
③介在事情の結果への寄与度の大小
★「米兵」最決昭42・10・24百選Ⅰ11
<事実>
在日米兵の被告人は,自動車を運転中に過失により被害者を跳ね飛ばし,自車の屋根に跳ね上げて意識を失わせた。が,それに気づかずそのまま疾走。4キロメートル走った時点で,同乗していた同僚がこれに気づき,約10キロの速度で走っている自動車の屋根から被害者の体を引き摺り下ろし,道路に転落させた。結局,被害者は死亡したが,この直接の原因は自動車との衝突によるものなのか,それとも自動車から転落したことによるものなのか定かでない。争点は,被告人の過失と被害者の死亡との因果関係である。
<判断>
同乗者が被害者を転落させるというようなことは,経験上予想できることではないし,特に本件では,被害者の死因が自動車との衝突か,自動車からの転落かが確定しがたいというのであって,このような場合に,被告人の過失行為から被害者の死の結果が発生することが,われわれの経験則上当然予想しえられるところであるとは到底いえない。