正当行為
- ●意義
違法性阻却事由となる正当防衛・緊急避難以外の法令・業務・その他行為(35条)。
○法令行為
ex.警察官による被疑者の逮捕(刑訴法199条),親権者の懲戒(民法822条)
○正当業務行為
ex.格闘技,取材活動
- その他の正当行為
1 労働争議行為
労働者が,使用者を相手方に,労働者の経済的地位向上のため,社会通念上相当と認められる方法によってなされる労働争議行為は,憲法28条→労働組合法1条2項本文によって,正当化される。
2 被害者の承諾
1) ●意義
被害者が自己の法益侵害に承諾・同意をなすこと
2) ▲要件
①△被害者にとって承諾が可能なこと
ex.遺棄罪は社会的法益も含む
→承諾不可
②△承諾能力+任意性=承諾の有効性
幼児等はだめ
③△承諾が行為時に存在する
④△承諾が外部に表明されること
⊃推定的承諾
⑤△承諾を認識して行われたこと
⑥△承諾によって行われた行為が社会倫理的に是認されうること
★「保険金詐欺の傷害」最決昭55・11・13百選Ⅰ21
<事実>
Xら4名は保険金を騙取しようと企て,Xが運転する自動車を他の3人が乗車する自動車に,第三者Aの運転する自動車を挟む形で衝突させ,結果,第三者と他の3名が傷害を負った。この事件で,Xは業務上過失傷害で有罪判決。
が,後に事の真相がばれてしまい,Xら4名はそれぞれ詐欺の有罪判決を受けた。このため,Xは業務上過失傷害罪は共犯者の同意があったのだから無罪になる,として再審を請求。最高裁は,再審請求を棄却しながらなお書きで次のように判示。
<判断>
承諾は保険金を騙取しようとする違法目的のための違法なもので,これによって傷害行為の違法性は阻却されない。
3) ◆効果
◇違法性阻却事由となる
¬⊃①住居侵入,窃盗,強姦(177条前段)
¬⊃②同意殺人,同意堕胎
¬⊃③強制わいせつ,強姦(177条後段)
3 被害者の推定的承諾
1) ●意義
被害者の現実的な承諾はないが,承諾があっただろうと推定される場合
2) ▲要件
①△被害者の承諾があれば違法性が阻却される犯罪である
②△承諾を得ることが不可能である
③△被害者が承諾したであろうと推測できる
4 治療行為
1) ●意義
医学上一般に承認されている方法で,人の身体に加える傷害
2) ▲要件
①△一般的に承認されている治療目的行為
②△患者の承諾,推定的承諾が存する
5 安楽・尊厳死
6 自救行為
7 義務の衝突
8 許された危険