罪数論

  • ●意義

犯罪の数の処理。

  • 一罪

・単純一罪(認識上一罪):1個の構成要件に1回該当
・評価上一罪:単純一罪が複数存在するが一罪
  ・法条競合:一見1個の行為が複数の構成要件に該当するが,構成要件相互の関係で,1個の構成要件にしか該当しない。
    ・特別関係:特別法>一般法(特別背任>背任)
    ・吸収関係:通常随伴関係(殺人>器物損壊)
    ・補充関係:基本となる構成要件の補充(傷害>暴行,殺人既遂>殺人未遂)
    ・択一関係:相互には両立しがたい(横領×背任)
  ・包括一罪:一見複数の行為が複数の構成要件に該当するが,構成要件の個性により,1個の構成要件にしか該当しない。    
    ・集合犯:構成要件的行為として数個・同種類の行為の反復が予定されているもの。
      ・常習犯:常習性を有する行為者の反復実行(常習賭博)
      ・営業犯:業としての反復実行(わいせつ文書販売)
    ・接続犯:数個の行為が時間的・場所的に近接して行われたもの。

  • 科刑上一罪

○:複数の犯罪が成立し,併合罪を構成するが,例外的に刑を課す上で一罪として取り扱われるもの。
・観念的競合:1個の行為が複数の罪名に触れる場合(54条1項前段)
  「1個の行為」=法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価を受ける場合(判例)。
・牽連犯:複数の行為が複数の罪名に触れるが「手段」「結果」の関係にある場合(54条1項後段)
  ↑客観的に判断される

判例「犯罪の手段とは,ある犯罪の性質上その手段として普通に用いられる行為をいうのであり,犯罪の結果とはある犯罪より生ずる当然の結果を指す」「牽連判たるにはある犯罪と,手段もしくは結果たる犯罪との間に密接な因果関係である場合でなくてはならない」

○:確定判決を経ていない複数の罪(45〜53条)。
併合罪中に死刑・無期刑が含まれていれば,それ以外の刑は科さないが(46条),死刑の場合は没収が併科でき,無期刑の場合は罰金・過料・没収を併科できる。
数個の有期懲役・禁固に処すべき罪がある場合,そのもっとも重い罪について定められた刑の長期の1.5倍が長期となるが,各罪の長期の合計を超えられない(47条)。また,いかに加重しても30年を越えることはできない(14条2項)。
罰金は,死刑以外の他の刑と併科する(48条1項)。数個の罰金は,各罪につき定めた罰金を合算した額以下で処断する(48条2項)。
etc・・・

  • ?問題点

?共犯と罪数の関係がよくわからない
  →教唆犯・従犯の場合は正犯の罪数に従って決定される。したがって,たとえば正犯が複数の犯罪を実現した場合は,それに対する幇助行為が1個でも,幇助者には複数の犯罪が成立するし,正犯が1個の犯罪しか実現しない場合に,幇助行為が複数あっても,それは観念的競合になる。

  • cf.

http://www.tanakakanamono.com/zkct.html