錯誤

事実の錯誤
   :行為者の認識した犯罪事実と,発生した犯罪事実に食い違いがある場合。
   故意が阻却される。
法律の錯誤
   :許されると思った事実が,実は許されない犯罪事実である場合。
   故意は阻却されない(刑法38条3項)。
   判例は,不要とする。

★「警察にだめって言われなかったから」最決昭62・7・16百選Ⅰ45
<事実>
被告人は自己の経営する飲食店の宣伝のため,百円紙幣の表面とほぼ同一で,そのうえに「サービス券」と赤い字で書いたサービス券を作成。これを製作した製版所は,被告人に「まずいのではないか」と忠告し,被告人もそうかもしれないと思い,警察に相談。警察では,もともと仲の良かった巡査に相談したところ,「サービス券という文字を大きくすれば,問題ないんじゃないか」といわれたが,まあ言いや,と思い,特に訂正をせずサービス券を製作・配布。通貨及び証券模造取締法違反に問われた。これに対し,被告人は「違法性の錯誤につき相当の理由を認めるべきである」などとして上告。
<判断>
原判決の判断は正当であり,行為の違法性の意識を欠くにつき相当の理由があれば犯罪は成立しないとの見解の採否について立ち入った検討をするまでもない。
<整理>
相談はもうちょっとフォーマルにやればよかったのではないかと思われる事例。なあなあでやったのが,まずかった。