共同訴訟

● 意義

1つの訴訟手続に,複数の原告もしくは複数の被告が関与する訴訟形態(民事訴訟法1編3章2節=38〜41条)。

  • ♪趣旨

♪①審理の重複回避
   →主に通常共同訴訟
♪②判決の矛盾回避
   →主に類似必要的共同訴訟
♪③手続保障
   →主に固有必要的共同訴訟

  • 種類

・通常共同訴訟
・類似必要的共同訴訟
・固有必要的共同訴訟


■ 通常共同訴訟

●意義
   個別訴訟の併合形態(⇔必要的共同訴訟)
   必要的共同訴訟とまではいかないが,便宜上併合したもの
      ∴主たるメリットは審理の重複回避


▲要件

(共同訴訟の要件)
第三十八条  訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

   △請求相互間の関連性(38条)
      ①権利義務共通(前段前)
      ②原因共通(前段後)
      ③権利義務同種∩原因同種(後段)
   △客観的併合要件(136条)
   △一般的訴訟要件


・審理の方式
   ・共同訴訟人独立の原則(39条)
      :各共同訴訟人は他の共同訴訟人の訴訟追行に影響されない
         ∵通常共同訴訟=便宜上のものにすぎない

便宜上 通常共同訴訟が便宜上のものにすぎず,各共同訴訟人が他の共同訴訟人の訴訟追行に影響されない(39条)と雖も,それを貫徹していたのでは審理の重複回避という制度目的を達成しえない。そこで,例外として証拠共通・主張共通の導入が問題となる。

   ・証拠共通
      :共同訴訟人の1人が提出した証拠は当然に他の共同訴訟人の共通の資料になる

?認められるか
認めても良いだろう。一般的に,また,自由心証主義(247条)のもとでは,真実は唯一無二である。また,共同訴訟人独立の原則との関連では,各共同訴訟人が証拠調べにかかわることができるため,問題がないといえる。

   ・主張共通
      :共同訴訟人の1人が主張した事実が他の共同訴訟人のためにもなされたものとみなす

?認められるか
共同訴訟のメリットは審理の重複回避と,判決の矛盾回避にある。だから,主張共通を認めるメリットもある。しかし,これを認めたのでは共同訴訟人独立の原則に,真っ向から反対することになる。あくまで,通常共同訴訟は便宜上のものであり,この原則を否定し,当事者の弁論主義を侵すような主張共通は認められない。判例も結論においてこのように解している。

★「主張共通」最判昭43・9・12百選101
<事実>
XがY1・2・3ら3人をもろもろの理由で提訴。原審はY3が口頭弁論を欠席し,準備書面の提出もされていなかったことを理由にY1・2の主張をY3にも及ぼした。
<判断>
通常共同訴訟では共同訴訟人のする訴訟行為は他の共同訴訟人のために効力を生じない。したがって,相互の補助には補助参加の申し出が必要であり,それがなければいかなる関係があるとき効果を認めるか明確な基準がないため,訴訟が混乱する。
原判決は破棄を免れない。

■ 類似必要的共同訴訟

●意義
   判決の合一確定のため,必要的共同訴訟の審判対象が適用される共同訴訟
      ex.株主代表訴訟
   必要的共同訴訟の一類型
   本来的には個別に訴え・訴えられるもの


■ 固有必要的共同訴訟

●意義
   数人が共同して初めて当事者適格が認められる訴訟(40条)
      →手続保障
      ex.婚姻取消の訴え等
   必要的共同訴訟の一類型
   本来の必要的共同訴訟

が,何が固有必要的共同訴訟に当たるのかは個別に決するしかない。


・個別

★「取締役解任の訴えは誰に?」最判平10・7・13百選A7
取締役解任の訴えは,会社と取締役との間の会社法上の法律関係の解消を目的とする形成の訴えだから,その当事者である会社と取締役双方を被告とすべきである。
実質的にも,争点となるのは取締役に不正・違反があったかどうかなのだから,取締役に対する手続保障の観点から,会社・取締役双方を被告とすべき固有必要的共同訴訟と解すべきである。

?共同所有関係に関する訴訟の選別基準は法定されていない。固有必要的共同訴訟なのか,それとも通常共同訴訟なのか
共同所有は総有・合有・共有に区別される。①総有は持分を有しないためその処分は構成員全員でする必要がある。したがって,この場合は固有必要的共同訴訟となる。②合有は持分を観念できるが,処分は単独ではできないため,やはり固有必要的共同訴訟となる。③これらに対し,共有は持分があり,かつ単独で処分できるものだから通常共同訴訟になる(実体法的原則)。しかし,固有必要的共同訴訟に取り込まれる部分が多くなると,煩瑣・不経済であるからここ具体例に応じてこの強制から解放する必要がある(訴訟法的調整)。*1

■ 共同訴訟の開始原因

共同訴訟の開始原因には,訴訟の当初から共同訴訟が提起される場合と,訴訟が始まってから共同訴訟になる場合があり,後者は訴訟参加の項で扱われる。
前者には訴えの主観的単純併合,訴えの主観的予備的併合,同時審判申出共同訴訟,訴えの主観的選択的併合がある。


訴えの主観的単純併合
   :訴えの当初から複数の請求につき1個の訴えを持って審判を求めるもの
   ex.共同不法行為者に対する損害賠償請求


訴えの主観的予備的併合
   :各請求が両立し得ない場合に,原告が請求に優先順位をつけて優先順位のものが認められることを解除条件として,後順位の申立の審判を求めて提訴する併合形態
   ex.「第一次的に占有者を,第二次的に所有者を被告に」
   ex.「債権の譲受人が主位原告,譲渡人が予備的原告」

★「主観的予備的併合の可否」最判昭43・3・8百選A38
<判断>
否。
①予備的被告の地位が,主位的被告の訴訟の結果如何によって大きく左右される(不安定・不公平)。
②分離した訴えになったとしても,条件付訴えになるから,不適法である。
<整理>
じゃあどうしたらいいのだ。わざわざ別々に訴えなくてはならないのか。ということで,平成8年改正によって,同時審判申出共同訴訟が認められるようになった。


同時審判申出共同訴訟(41条,規19条)
   :通常共同訴訟だが,各請求が両立し得ない場合に,原告の同時審判の申立により,弁論と裁判の分離を禁じる場合
      ≒主観的予備的併合

(同時審判の申出がある共同訴訟)
第四十一条  共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。

   △要件
      41条1項2項
   ◇効果
      裁判所は,弁論・裁判を分離できない
      共同訴訟人独立の原則は維持される
         ∵あくまで通常共同訴訟


訴えの主観的選択的併合
   :各請求が両立しうる場合に,択一的にいずれかの請求の認容を求める場合
   ex.占有者か,所有者か

*1:具体例・・・書研254頁〜