訴えの客観的併合
- ●意義
○狭義(固有の訴え客観的併合)
:1人の原告が1人の被告に対して当初から1つの訴えで複数の請求をすること(136条)
○広義(請求の併合)
:訴えの提起後に請求の併合をすること
・訴えの変更(143条)
・反訴(146条)
・中間確認の訴え(145条)
・弁論の併合(152条1項)
単純併合,選択的併合,予備的併合がある。
○単純併合
:数個の請求を単純に併合し,すべての請求について審判を求める併合形態
○選択的併合
:同一目的の両立しうる数個の請求のうち,そのうち一つが認められないことを停止条件として,他の請求の審判を求める併合形態
ex.所有権でだめだったら,占有権で
旧訴訟物理論の帰結
○予備的併合
:法律上両立し得ない複数の請求に順位をつけ,主位請求が認められないことを停止条件として,副位請求の審判を求める併合形態
- ▲要件
1 △複数の請求が同種の訴訟手続きによって審判されるべきものである(136条)
2 △法律上併合が禁止されていない
3 △請求について受訴裁判所に管轄権がある
- 併合請求の審判と判決
1 要件の調査
だめなら請求却下,ではなく請求を分離して独立の訴えにする
2 審理・判決
弁論・証拠調べはすべての請求に共通して行う
が,予備的併合・選択的併合においては弁論分離・一部判決はだめ
∵控訴審と矛盾が生じうる
↑単純併合は?
3 控訴審
控訴があれば,全請求につき控訴の効果を生じる(控訴不可分原則)
1) 予備的併合で主位請求認容判決に被告が控訴した場合
- ?控訴審裁判所は主位請求認容判決を取り消して,副位請求について判断できるか
- この場合,問題は2つある。1つはそもそも副位請求は移審しているのかという問題と,もう1つは,移審しているとして,副位請求を審理することができるのか,という問題である。前者については,主位請求と副位請求の相互密接関連性のゆえに,移審していると解すべきである。確かにこのような場合には,原告の附帯控訴をまって審判の対象にすべきとも考えうるが,わざわざ前述の相互密接関連性が認められる副位請求の附帯控訴を要求するのは,手続きが煩雑になるだけであり,形式的な側面しかない。さらに,後者の副位請求の審判の可否だが,これは当事者の審級の利益の問題にかかる。審級の利益とは,訴訟の当事者が上訴を重ねて,慎重な審判を求める利益のことをいうが,副位請求が1審で審理されず,いきなり控訴審で審理されるのであれば,この審級の利益を害することになる。では,副位請求が審理されていなければ,控訴審の副位請求の審理は「いきなり」ということになるのだろうか。否,そう解すべきではない。なぜなら,副位請求といえども,やはり主位請求と相互密接関連性が認められるからである。このため,控訴審裁判所は主位請求を取り消したうえで,副位請求の審判をなすことは認められるのである。
2) 予備的併合で副位請求認容判決に被告のみが控訴した場合
- ?控訴審裁判所は副位請求認容判決を取り消して,主位請求について判断できるか
- 副位請求と主位請求の相互密接関連性により,審判の前提となる移審の効果は認められる。また,審級の利益も害されることもないだろう。しかし,問題となるのは不利益変更禁止原則との関係である。不利益変更禁止原則とは上訴における処分権主義(246条)の表れであり,上訴審の審理・判決の対象は不服申し立ての範囲に限られるという原則(296条1項・304条)のことをいう。本件のように,被告のみが副位請求認容判決に控訴した場合,この原則からすれば,審判の対象は副位請求の部分のみに限られることになる。なぜなら,主位請求が審判の対象となるとすれば,控訴をした被告にとって不利益な判断が下される可能性があるからである。したがって,控訴審裁判所は,原告の控訴・附帯控訴がない限り,副位請求認容判決を取り消して,主位請求について判断することはできない。