公判手続
- ●意義
公訴提起〜判決確定までの全過程(刑事訴訟法3章1節等)。
公訴提起〜公判準備〜公判手続〜判決確定〜訴訟終了
狭義:公判期日における手続@公開の法廷
- 諸原則
1 公開主義
:一般の国民の公判の審判を公開すること
♪趣旨=公平な裁判の担保+国民の裁判に対する信頼確保
377条3号,憲法37条1項・82条
2 口頭弁論主義
:公判手続はなるべく口で行おう
♪趣旨=公開主義のためには,書面でやるより口のほうがいいだろう
43条1項等
- 訴訟行為
1 ●意義
訴訟手続きを構成する,訴訟法上の効果を生ずる行為
2 ▲要件
1)△行為適格
ex.公訴提起は検察官のみ
2)△代理
3)△訴訟能力
:適法に訴訟行為をすることができる意思能力
↑意味を理解し,自己の権利を守ることができなきゃだめ
心神喪失の場合は要公判停止(314条1項)
心神喪失≠刑法上の心神喪失
★「被告人の訴訟能力」最決平7・2・28百選56
<判断>
被告人の訴訟能力に疑いがある場合には,314条4項により医師の意見を聞き,被告人の訴訟能力の有無について審理を尽くし,訴訟能力がないと認めるときは原則として同条1項により,公判手続を停止すべきである。
(千種裁判官補足意見)
被告人の状況等によっては,手続を最終的に打ち切ることができるものと考えられる。
- ▼公判準備
1▽被告人の出頭確保
1) 召喚
:「来なさい」(強制)
2) 勾引
≒連行
3) 勾留
受訴裁判所が行う(60条1項)が,第1回公判期日前は裁判官が行う(280条1項)
∵予断排除
これを解くのを保釈という(88〜96条)
2▽公判準備手続
1) 事前準備
:第1回公判期日前の手続
迅速な裁判のため充分な事前準備が必要
が,予断排除の原則にも留意
@当事者
争点明らかにするため事前の打ち合わせをしなければならない(規178条あたり)
@裁判所
起訴状送達
- ?外人にはどうするのか
- 訳文をつけることが望ましいだろう。もっとも,訳文をつけなければならないとする規定は,ない(裁判所法74条,刑訴法175条反対解釈)。
一応手続きが終われば第1回公判期日指定(273条1項)
2) 準備手続
:第1回公判期日後の手続
予断排除の原則は,終わってる
3▽証拠開示
:当事者が手持ちの証拠の内容を相手方に明らかにすること
★「訴訟指揮と証拠開示の要件」最決昭44・4・25百選61
裁判所は訴訟上の地位にかんがみ,法規の明文・訴訟の基本構造に違背しない限り,適切な裁量により公正な訴訟指揮を行い,訴訟の合目的的進行を図るべき権限と職責を有する。証拠調べの段階に入ったあと,弁護人から具体的必要性を示して,一定の証拠を弁護人に閲覧させるよう検察官に命ぜられたい旨の申出がなされた場合,事案の性質,審理の状況,閲覧を求める証拠の種類・内容,閲覧の時期,程度・方法,その他諸般の事情を勘案し,その閲覧が被告人の防御のため特に重要で,かつこれにより罪障隠滅,承認威迫等の弊害を招来するおそれがなく,相当と認めるときは,その訴訟指揮権に基づき,検察官に対し,その所持する証拠を弁護人に閲覧させるよう命ずることができると解すべきである。
- ?証拠開示命令に異議がある場合はどうなる
- 検察官は異議を申し立てることができる(309条1項)。弁護人に,証拠開示命令を裁判所が出さないことについての不服がある場合には,異議を申し立てることはできない。なぜなら,証拠開示命令はあくまで職権によって行われるものであり,これに異議申立て権を認めることは,明文のない証拠開示の申立て権を認めることになるのと同じになってしまうからである。
281条の3〜5追加(平成16年)
- ▼公判手続
1▽公判廷
:公判を開く法廷(281条)
ここでの公開審理を公判期日という
・被告人の出頭
◎原則→必要(286条)
×例外→不要(283〜285条)
+その他
・弁護人の出頭
◎原則→不要
×例外→必要@必要的弁護事件(289条1項)
★「逆手に取られる289条1項」最決平7・3・27百選58
<事実>
本件は必要的弁護事件であるが,第1審において被告人が国選弁護人に公判期日への不出頭を要求したり裁判所に解任請求をしたりしたため,8名もの弁護人関与の後,結局誰も弁護人が出頭しなくなり,裁判所は弁護人の立会いがないまま有罪判決言渡し。これに対し控訴審は破棄差戻し。
が,被告人はまたもや同様の行為を繰り返し。今度は弁護人本人・家族への脅迫等まで加えるに至った。そして,またもや裁判所は弁護人立会いがないまま有罪判決言渡し。これに対し控訴審は控訴棄却。被告人上告。
<判断>
上告棄却。
①裁判所が弁護人出頭確保のために方策を尽くしたにもかかわらず,②被告人が弁護人が在廷しての公判審理ができない事態を生じさせ,③かつこの事態を解消することが極めて困難な場合,には289条1項の適用がない。けだし,このような場合,①被告人は必要的弁護制度による保護を受け得ないし,②実効ある弁護活動も期待できない。更に,このような事態は③刑訴法の想定しないところだからである。
2▽公判手続の進行概略
①冒頭手続
人定質問(規196条)
↓
起訴状朗読(291条1項)
↓
黙秘権告知(291条2項,規197条1項)
↓
被告人・弁護人の陳述(291条2項)
②証拠調べ手続
まず冒頭陳述(296条)
「〜の事実を明らかにします」
被告人・弁護人もできる(規198条1項)
↓
そして証拠調べ請求(298条1項)
証拠と証明すべき事実の関係(立証趣旨)を明示する(規189条1項)
↓
これに対して裁判所の決定による採否(規190条1項)
↓
証拠調べ
③弁論
:事実及び法律の適用についての意見陳述
まず検察官が(293条1項)
:論告
量刑についての意見を述べることを求刑という。これは慣行であり,訴訟法上の義務ではない。
次に被告人・弁護人が(293条2項)
:最終弁論
④判決
公開の法廷において,宣告によって告知する(342条,規34条,裁70条)