犯人蔵匿・証拠隠滅罪
- ♪法益
♪司法作用の適正運用
@刑事裁判
- 犯人蔵匿罪(103条)
△(1)罪を犯した者(客体)
・「罰金以上の・・・」
:法定刑
・「罪を犯した者」
- ?どのような者をいうか
- 犯罪の嫌疑に基づいて,捜査・訴追がされている者をいう。このように解しなければ司法作用の適正運用という法益を保護しえない。また,捜査開始前であっても犯人を蔵匿した場合,後に捜査が開始されれば事前に司法作用を害したことになるから,このような場合も含まれる。
△(2)蔵匿・隠匿(行為)
・「蔵匿」
・「隠匿」
- ?身代わりの提供は隠匿になるか
- なる。司法作用の適正運用を害しているからである。
- ?真犯人が釈放されない場合はどうなる
- 既遂である。保護法益は司法作用の適正運用であり,総合的にみてこれが害されているのであれば,これが結果となる。
- 証拠隠滅罪(104条)
△(1)証拠(客体)
・「証拠」
:刑事事件の処理に関する一切の資料
⊃物証,人証
・「他人の刑事事件」
∵自己の刑事事件の場合,当事者のため期待可能性がない
→自己隠滅は構成要件非該当
- ?では共犯者の証拠を隠滅した場合はどうなる
- その行為がもっぱら共犯者に向けられたものである場合には,本罪が成立する。無条件に肯定するのは自己の刑事事件でもあるため妥当ではないし,無条件に否定するのも証拠が一部の者のみにかかわることが考えられるため,やはり妥当ではない。
△(2)隠滅・偽造等(行為)
・「隠滅」
・「偽造」
・「変造」
・「使用」
証人に偽証させることは広義の「隠滅」等にあたると考えられるが,偽証罪の規定がある以上,偽証罪の問題として処理する。
- 共犯
- ?犯人が他人を教唆して,自らを隠れさせたり,証拠を隠滅させたりした場合に,教唆が成立するか
- 成立しない。まず,なぜ自己蔵匿・証拠隠滅が不可罰になるのかを考えると,犯人がこれらの行為をするのは心情的に当然のことであって,期待可能性が乏しいからであると考えられる。であるならば,他人を介在しようがしまいが期待可能性はやはり乏しいのである。そうすれば,自己蔵匿・証拠隠滅同様,他人を教唆して実行させても,不可罰であるから,教唆は成立しない。
- ?だとすれば偽証の教唆が成立することと矛盾するのではないか
- 偽証は積極的に審判作用を陥れようとしているのに対し,証拠隠滅等は消極的な侵害にとどまる。このように,罪質が相当程度違うため,教唆の成立不成立は矛盾ではない。法定刑の違いも考慮すべきである。
- ?では,105条の場合において,犯人の親族が他人を教唆した場合はどうか
- 105条適用となる。他人を介在しようがしまいが,期待可能性はやはり乏しいからである。「庇護の濫用」であるとする判例は,この点を考慮すれば妥当ではない。
- ?他人が親族を教唆した場合はどうか
- 他人には105条適用はない。本条は一身専属的な処罰阻却事由であるからである。このため,親族には105条適用がある。
- ?犯人が犯人の親族を教唆した場合はどうか
- 犯人には教唆が成立せず,親族には105条適用がある。理由は前述した。
- cf.