手形関係と原因関係

手形は無因証券性があるため,原因関係とは牽連性がない。では,具体的に,手形関係と原因関係はどのように並存するのだろうか。


● 意義

手形関係
    :手形自体の法律関係
原因関係
    :手形関係(授受)の原因となる対価(債権債務)関係

■ 手形授受のタイプ分け

□①支払の代替手段として(「支払に代えて」)
    手形振出→◇新たな支払手段の発生+◇原因債権の消滅
        ∴手形,しか使えない。
□②支払の主たる手段として(「支払のために」)
    手形振出→◇新たな支払手段の発生=手形債権と原因債権の「並存」
        ∴手形,原因債権の両方が使える。
         ↑「支払のために」だから→手形の先履行義務。
□③支払の担保として(「担保のために」)
    手形振出→◇新たな支払手段の発生=手形債権と原因債権の「並存」
        ∴手形,原因債権の両方が使える。
         ↑「担保のために」だから→どちらを先に使ってもよい。


∴債権者にとっての効力の強さ
    ③>②>①


? 手形関係の原因関係への影響

=当事者の意思が不明な場合の推定
前提:できるだけ合理的な意思を推認すべし


?原因関係の存続の有無
    ②
    ∵手形金の支払いがあるとは限らない
    ↓存続するなら
?行使の順序
    原因関係の債務者=手形上の唯一の債務者→③
        ∵どちらを先に求められても変わりない(最判昭23・10・14百選88)
    原因関係の債務者手形上の唯一の債務者→②
    (裏書などがされている場合)
        ∵①は債権者に酷
    ↓③の場合
?手形返還の要否
    要(最判昭33・6・3百選89)
    ∵流通の危険回避
    ≠同時履行の抗弁権(遅滞責任は免れない)
    ≠受戻証券性(ここで問題なのは原因関係権利の行使と手形の返還)


? 原因関係の手形関係への影響

◎原則:影響しない(無因性)
×例外:人的抗弁による影響有り