不動産物権変動
● 意義
不動産物権の発生(得)・消滅(喪)・変更のこと。
○不動産
:土地およびその定着物(86条1項)
▲ 要件
△意思表示(176条)
:意思主義(⇔形式主義)
→即,物権変動
:物権行為の独自性否定説(⇔物権行為の独自性肯定説)
=物権行為が必ず必要であるというわけではない
- ?意思表示のみで物権変動があれば,不当な場合もある。代金の支払いがなされていないのに,契約が交わされれば即所有権が移転するとすれば妥当ではない
- 物権行為の独自性を否定しても,物権行為によって物権が変動することを176条は排していない。たとえば,上記契約の場合には代金支払によって所有権が移転するのが一般的であるから,特約があればそれが優先され,特約がなくとも契約内容の推知をして代金支払い時に物権が変動すると解すればよい。
▲ 対抗要件
- ?意思表示だけで物権変動が生じるのが意思主義であるはずなのに,対抗要件が別にあるのはどういうことか
- 意思表示によって物権変動が生じるのは,当事者および登記の欠缺を主張しない第三者においてのみであり,第三者が登記の欠缺を主張すれば,意思表示を理由とする物権変動は対抗できないことになる。
△登記(177条)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
★「民法177条の『物権変動』『第三者』に対する同条の射程範囲」大連判明41・12・15
<争点>
1)対抗要件が必要とされる物権変動の範囲
2)対抗要件が必要とされる第三者の範囲
<判断>
1)すべての物権変動を含む(変動原因無制限説)
2)登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者(制限説)
<整理>
入会権はいらない(大判大10・11・28)・・・ということは,無制限説といえども,無制限ではない。
☆物権の得喪及び変更・・・変動原因無制限説における個別例
取消の所有権の復帰・・・登記が必要(大判昭17・9・30)
解除で所有権の復帰・・・登記が必要(最判昭35・11・29)
死因贈与も必要(最判昭58・1・24)
生前贈与も必要(最判昭47・7・18)
特定遺贈も必要(最判昭39・3・6)
生前贈与と特定遺贈は登記の先後で優劣決定(最判昭46・11・16)
共同相続で他の共同相続人が単独移転登記をした場合は自己の持分につき登記不要(最判昭38・2・22)
相続分と異なる遺産分割については登記が必要(最判昭46・11・16)
相続放棄の効力は絶対的・・・登記不要(最判昭42・1・20)
時効取得は所有者については登記不要(大判大7・3・2)
第三者に対しては登記が必要(最判昭41・11・22)
第三者に対しても取得時効が完成すれば不要(同上)
時効完成後に所有者から譲り受けた第三者に対しても必要(最判昭33・8・28)
取得時効の起算点は勝手にずらせない(最判昭35・7・27)
国税滞納処分による差押えにも適用有り(最判昭31・4・24)
☆第三者
:登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者(制限説)
◎該当するものの例
譲受人
差押債権者(最判昭39・3・6)
賃借人(最判昭49・3・13)
共有者(最判昭46・6・18)
×該当しない者の例
不動産登記法4・5条列挙者
①詐欺・強迫によって登記申請を妨げたもの(不5条1項)
②他人のために登記申請をする義務あるもの(不5条2項)
∵¬正当
実質的無権利者
登記簿上の架空の権利者(最判昭34・2・12)
∵¬正当
不法占拠者・不法行為者(最判昭25・12・19)
∵¬正当
前主・後主の関係にある者
∵¬第三者
背信的悪意者(最判昭43・8・2)
∵¬正当
≠悪意者
=自由競争の逸脱者 ←信義則上第三者に当たらない
⊃復讐目的の譲受人(最判昭36・4・23)
¬⊃背信的悪意者からの転得者(最判平8・10・29)