譲渡担保

● 意義

債権の担保として,物の所有権を移転する契約。
慣習によって公認された非典型担保物権

  • ♪趣旨

♪効力の強化・手続の簡易化
   競売手続による必要がない
♪担保物の拡充
   登記が不要
      抵当権の弱点を克服
      →集合動産,ソフトウェア・・・
   占有移転が不要
      質権の弱点(345条)を克服
      →使用中の機械,備品・・・
   形成途中のものでもよい
      どの典型担保に当てはまるかわからないものでもよい
      →電話加入権,老舗権,営業権・・・


■ 法的構成

  • 動産・不動産譲渡担保

譲渡担保は,文字通り担保権であるのに,形式的には所有権が移転している。そうすると,法的には,担保権として構成するのか,はたまた所有権として構成するのかが問題となる。
○所有権的構成=信託的譲渡(旧来の判例
○担保的構成=二段階物権変動(最近の判例

?どっちがいいの
形式面を重視して,所有権的構成としたほうが,明確ではある。しかし,そうしてしまうと,完全に所有権が譲渡担保権者に移転してしまうこととなるが,たとえば,譲渡担保権者が担保目的物を第三者に売却した場合,第三者は,悪意でも有効に所有権を取得できてしまう。こうなると,設定者は著しく弱い立場に立たされることになる。譲渡担保は,文字通り「担保」であり,当事者の所有権移転の意思も担保権設定の意思に他ならない。譲渡担保は,担保的な法的構成をとるべきである。したがって,譲渡担保権者は,担保権設定により所有権を取得するのではなく,単に担保権を取得するに過ぎないのである。
  • 債権譲渡担保

≠普通の債権譲渡

  • 集合物譲渡担保

○分析的構成
○集合物的構成

?どっちがいいの
一個一個の物に譲渡担保が成立すると見ることも,不可能ではないだろうが,あまりに技巧的過ぎる。「集合物」という一つの物のうえに,譲渡担保が成立しているとするべきであろう(集合物的構成)。

最判昭和54・2・15
一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるためには,種類・所在場所・量的範囲などの目的物の範囲の特定が必要である。

?善意の第三者に不足の損害が発生する可能性はないのか
可能性はある。が,だからといって明認方法を対抗要件とすべきとの考えを採用すべきとも思わない。即時取得(192条)でよいだろう。
  • 集合債権譲渡担保
?集合物譲渡担保のように,集合債権も一つの物とすることができるか
債権はただでさえ目に見えないものであり,集合債権としたところで,やはり目に見えないのだから一つの物としては観念し得ない。そうするといきおい,分析的構成をとらざるをえないが,そのためには,目的債権の「特定」が譲渡担保設定のためには不可欠である。

最判平成12・4・21百選98
特定は譲渡人が有するほかの債権から識別することができる程度になされていればよい。債権者と債務者の特定があり,発生原因が特定の商品についての売買取引とされている場合には,特定があるといえる。

▲ 要件

  • 設定

△諾成(176条)

?虚偽表示ではないのか
真意があるから,虚偽表示ではない。
?物権法定主義(175条)に反するのではないか
社会的に重要な機能をすでに果たしているのだから,同条を合目的的に解すれば,物権法定主義に反するとはいえないだろう。そのような判例もない。

   ・目的物
      譲渡性∩財産的価値

  • 実行

△債務者の遅滞


対抗要件

  • 不動産

△登記(177条)

  • 動産

△占有改定の意思表示(183条)(最判昭30・6・2)
   →(譲渡担保権者の)第三者異議の訴え可(最判昭56・12・17)
   →(設定者の)不法占有者への返還請求可(最判昭57・9・28)

  • 債権

△債務者への通知or承諾(467条)


◆ 対内的効果

  • 設定

◇所有権の移転
   ・被担保債権の範囲
      目的物の価格>(3倍)>被担保債権額→公序良俗違反(90条。暴利行為)
      将来のための根譲渡担保もあり
   ・目的物の範囲
      ⊃従物(370条類推)
      物上代位(304条)

★「貿易取引最前線」最決平成11・5・17百選Ⅰ96
<前提>
信用状取引:信用状取引は,信用状を発行する取引であり,信用状とは,Letter of Creditといい,輸入者の債務を銀行が保証するために,銀行が輸入者の依頼に基づいて,輸出車に対して発行する支払保証書のことである。
<事実>
Aは,お願いを言ってY銀行に信用状を出してもらった。その代わり,Y銀行とAは,Aの輸入商品に譲渡担保を設定することで合意。尚,Aはこの設定によっても処分権限は与えられているから,AはBに対して商品を売り渡した(代金の支払いは済んでいない)。
しかし,その後,Aが破産。このためYは,譲渡担保件に基づく物上代位権の行使として,AのBに対する商品売却代金を差し押さえを申立て,認容され,差押え命令を得た。これに対して破産管財人Xは,この命令の取消を求めて戦ったのが本件である。
<判断>
本件の事実関係のもとにおいて,Yは譲渡担保件に基づく物上代位権の行使として,転売された商品の売却代金債権を差し押さえできる。Aが破産宣告を受けた後でも,できる。
<整理>
上代位は,目的物の交換価値を把握して優先弁済を受けようとする,担保物権にのみ認められるもの(304条・350条・372条)である。そうすると,この判例は譲渡担保に物上代位権を認めることによって,譲渡担保の法的性質を担保的にとらえているといえる。ただし,「本件の事実関係のもとにおいて」。

   ・目的物の使用・収益


受戻権


   

  • 実行

◇所有権の確定的移転
   ・清算義務最判昭和46・3・25百選Ⅰ95)
      →明渡は↑の清算金(おつり)の支払と同時履行=引換給付
   ・処分清算
      債務不履行→目的物の売却→代金徴収=優先弁済
   ・帰属清算
      債務不履行→目的物の収受=優先弁済


■ 対外的効力

・弁済期前の譲渡担保権者の第三者への処分
・弁済期前の設定者の第三者への処分
・譲渡担保権者の一般債権者の強制執行
   設定者の第三者異議の訴え
・設定者の一般債権者の強制執行
   譲渡担保権者の第三者異議の訴え
・第三者が目的物を侵害した場合


? 問題点

?譲渡担保権者が債務の弁済前(弁済期後)に第三者に目的物を売却
   背信的悪意者でも有効(最判平成6・2・22)
?譲渡担保権者が債務の弁済後に第三者に目的物を売却
   背信的悪意者でない限り有効(最判昭和62・11・12)