担保責任

● 意義

売買契約において,目的物に瑕疵がある場合に,売主が負う無過失責任(民法3編2章3節2款=560条〜578条)。
権利的に瑕疵がある・・・権利瑕疵担保責任(追奪担保責任)
物的に瑕疵がある・・・瑕疵担保責任
宅建業法,住宅品質確保法に特則。
債務不履行責任との違い

  担保責任 債務不履行責任
売主の帰責性 不要 必要(415条)
代金減額請求 可(563条等) 不可
解除の際の催告 不要 必要(531条)
行使期間 原則1年 10年
  • ♪趣旨

有償契約における対価的均衡維持

  • 種類

・他人物売買(560条〜564条)
・数量不足・一部滅失(565条)
・他人の権利の付着(566条・567条)
・競売特則(568条)
・債権の売買(569条)
瑕疵担保責任(570条)


■ 他人の権利の売買における売主の担保責任

第五百六十一条  前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。

?買主に帰責性がある場合はどうなる
この場合,売主は担保責任を負わない。当事者公平のためである。

権利行使期間に制限はなし


□一部のみが他人の権利である場合

第五百六十三条  売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
2  前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
3  代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。
第五百六十四条  前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない。

権利行使期間に制限有り

★「期間の起算点」最判昭48・7・12百選Ⅱ50
<事実>
本件土地はA→Y→Xと順に売買されたが,XはYから土地を購入する際(昭和35年),Yの振る舞いから買主はAであると誤信していた。Xは,昭和42年4月13日に本件土地の面積が足りないことを発見,これを理由にAを相手として代金減額訴訟を提起したが(昭和42年4月14日),ひょっとして売主はYかもしれないと思い,念のためYも訴えた(昭和43年10月17日)ところ,同年12月7日前訴請求でAは売主ではないとの判示を受けた。
Xへの本訴提起は,昭和42年4月13日から1年以上経過した昭和43年10月17日に行われているが,「事実を知った時」は売主を知ったときを含むのかが問題。
<判断>
・・・除斥期間は,買主が数量不足について走っているものの,その責に帰すべきでない事由により売主の誰であるかを知りえなかったときは,買主が売主を知ったときから起算すべきである。本件でこれを知ったときは昭和43年12月7日である。

■ 数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任

第五百六十五条  前二条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。

★「数量の指示」最判昭57・1・21百選Ⅱ51
<事実>
XはYから土地を買うとき,現地において土地と実測図と見比べてみたが,実測図のどの線が土地のどこに当たるのかを判別できなかった。
その後,土地購入から10年ほどして実測図と比べて実は土地が狭いということが判明し,足りない部分につき値上がりによるうべかりし利益を求めて,XはYを提訴。
<判断>
土地の売買契約において,土地の面積が表示されたとしても,その表示が単に代金額決定の基礎であるにとどまる場合には,特段の事情がない限り,買主が得たであろう利益についての損害賠償責任は発生しない。

■ 他人の権利が付着している場合における売主の担保責任

□地上権等がある場合等における売主の担保責任

第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。


□抵当権等がある場合における売主の担保責任

第五百六十七条  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2  買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3  前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

■ 強制競売における担保責任

第五百六十八条  強制競売における買受人は、第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
2  前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
3  前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。

570条はこれを準用していない→競売物件の買主は瑕疵担保責任の追及できない


■ 債権の売主の担保責任

第五百六十九条  債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。
2  弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。

債権の売買において・・・
   ◎原則(特約無し):債権の売主は債務者の資力を担保しない
   ×例外(特約有り):債権の売主は債務者の資力を担保する
      ↑この場合に本条の適用
      →「契約時における資力」の担保
      →「弁済期における資力」の担保 @弁済期に至らない債権


瑕疵担保責任

第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

□隠れた
   =取引上要求される一般的な注意では発見できない
      →買主が善意・無過失であることが必要になる
□瑕疵
   =取引上売買の目的物に何らかの欠陥がある
   ⊃法律的瑕疵?
   ⊃建物売買における借地の瑕疵?
□期間制限
   除斥期間最判平4・10・20)


?錯誤との関係

★「95条と570条の関係」大判大10・12・15百選Ⅱ52
<事実>
XはYから130馬力の電動機を買ったが,実は30〜70馬力しかなかった。Xは95条を根拠に売買契約の無効を主張。
<判断>
当事者が特に一定の品質を備えていることを重要なものとして意思表示したか否かにより,場合が分けられる。意思表示があれば95条が,そうでなければ570条が適用される。