危険負担

● 意義

一方の債務が債務者の責に帰すことができない理由によって毀損した場合に,他の債務の存続をどうするかという問題(民法534〜536条)。


債権者主義(534条1項)

:債権者が危険を負担する場合
特定物設定・移転を目的とする双務契約に適用される

?債権者主義が認められる根拠は何なのか
一般には,「利益の帰するところに損失もまた帰する」,「所有者は危険を負担する」の2点が挙げられるが,債権者に利益が必ず存在するわけでもなければ,所有者が危険を負担することの合理的理由があるわけではない。
?では債権者主義の規定をどのように捉えればよいのか
まず,当事者が特約によってこの規定を排除することは有効である。さらに,債権者主義は不合理な規定であるから,これを排除する暗黙の合意が存在することを推定できる。また,不特定物に関しては債務者主義が取られることから,特定物の設定・移転を合理的な時期において捉えなおすことも考えられる。所有者ではなく「支配者危険を負担する」ことは理由があるだろう。これの帰結として,二重売買と他人物売買においては,支配が移転していないため,債務者主義規定が適用されることになる。

債務者主義(536条1項)

:債務者が危険を負担する場合
債権者主義以外の場合に適用される
債務者が債務を免れて利益を得たときは利益償還の義務がある(536条2項但書類推適用。大判大15・7・20)
債務者が代償たる利益を得たときは,債権者は代償の譲渡を請求できる(304条・422条参酌)