錯誤

  • ●意義

表示意思に対応する効果意思が存在せず,それを表意者自身が知らない状態(民法95条)。


  • ♪趣旨

♪表意者の保護


  • 種類

1)動機の錯誤
  :「動機」と「効果意思」のリンクが不正
    ex.豚肉入りのぶたまんを買おうと思ったが,豚エキスしか入っていない
2)内容の錯誤
  :「効果意思」と「表示意思」のリンクが不正
    ex.あんまんとちまきを同じものだと思っていた
3)表示上の錯誤
  :「表示意思」と「表示行為」のリンクが不正
    ex.「(あんまんを買おうとして)アンパンください」
cf.http://nagatazemi.hp.infoseek.co.jp/houkoui3.html


  • ▲要件

△(1)法律行為の要素に錯誤があること(95条本)

?動機の錯誤は意思の形成過程の錯誤であり,表示意思に対応する効果意思は存在するわけだから,95条の錯誤にはあたらないのではないか
確かにそのとおりである。しかし,95条の趣旨は表意者の保護にあるため,実際のケースの大半をしめる動機の錯誤を含める必要がある。ただし,あまりにもこれを尊重すると今度は取引の安全が害される。このため,動機の錯誤は原則として錯誤とはならないが,その動機が明示にせよ黙示にせよ表示され,かつそれが法律行為の要素である場合には,要素の錯誤となりうると解する。そして,更にその無効主張の正当性のため,表意者が動機を意思表示の内容の主要部分とし,この点につき錯誤がなければ意思表示をしなかったという因果関係と,これが一般取引においても相当であることが要求される。
普通,ぶたまんを買おうとするものはあえて表示しなくとも豚肉入りのものであることを信頼して購入する。ここで,黙示の動機表示が認められる。そして,ぶたまんにとって豚肉が入っているかいないかはぶたまんにとって重要な要素である。表意者にとってもこれは意思表示の内容の主要部分であり,豚エキス入りなら買わなかったであろうという因果関係もあり,一般取引における相当性も認められる。したがって,豚エキスしか入っていないぶたまんを購入したものは,95条の錯誤無効を主張できる。


△(2)表意者に重大な過失がないこと(95条但)
  重過失の存在の立証責任は相手方にある


  • ◆効果

◇無効
  cf.◆錯誤無効の抗弁◆
  =取消的無効
    ∵表意者保護規定
      ∴常に無効とする必要はない
      ∴相手方からの主張は許されない

★「債権者代位権としての錯誤無効主張」最判昭45・3・26百選18
意思表示の要素の錯誤については、表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないときは、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されないものであるが、当該三者において表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者みずからは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することが許されるものと解するのが相当である。