詐欺

  • ●意義

人を欺いて錯誤に陥らせてさせる意思行為(民法96条)。


  • ▲要件

△欺罔行為による意思表示(96条1項)
  cf.◆詐欺取消の抗弁◆


  • ◆効果

◇取り消しうる(96条1項)
  第三者詐欺規定(96条2項)
  善意の第三者には対抗できない(96条3項)
    ・「第三者
      :詐欺による意思表示を前提として新たに独立の法律上の利害関係を作るに至った者

?取消後ではだめなのか
だめである。なぜなら,96条3項は詐欺により取り消された意思表示を有効なものと信じて取引関係に入った第三者を保護するものであるところ,取消し後では有効と信じるにつき正当な基礎を欠くからである。
?無過失は要求されるか
されない。96条3項のごとく,善意のみ要求される。被詐欺者には詐欺に陥ったという若干のミスが存在するため,このミスを根拠に取引の安全を尊重する。したがって,不動産取引においても対抗要件としての登記は不要である。
?取引の安全を尊重するのであれば,取消し後の第三者であっても保護の要請があるのではないか
確かにそうである。取消し後の第三者は96条3項の第三者には含まれないが,しかし,取り消したあとただ漫然と現状を放置している表意者を無条件に保護するのは,第三者保護とのバランスの上で問題となる。このため,取消による遡及的無効(121条)はあくまでも法的擬制であり,取消しによる効果としては復帰的に物権が変動すると構成することが公平である。つまり,詐欺者を中心とした表意者・第三者への二重譲渡と構成する。したがって,不動産取引の場合,表意者は錯誤を理由に取り消したとしても,自己へ移転登記をする前に第三者が登記をした場合は保護されず(177条),動産取引の場合も,現実に物を取り戻す前に第三者が取得した場合(192条),やはり保護されない。