証拠調べ

  • ●意義

裁判所が心証形成のためにする証拠方法の調査。

  • 種類

・証人尋問
・当事者尋問
・鑑定
・書証
・検証

  • 総則

証拠調べは,当事者の申し出(証明すべき事実と証拠方法,及びそれらの関係(180条1項→規99条))を待って行われるのが原則(×例外→証拠調べの補充としての調査の嘱託(186条)etc.)。   
申し出は,期日前にもできる(同条2項)(∵事前準備が可能)。
申し出の取消は可能だが,裁判所の心証がいったん形成されればその撤回はできない(最判昭58・5・26)。
裁判所は,この証拠方法のうち,不必要と思われる証拠調べをしないことができる(181条)(×例外→証拠方法が1つしかない場合,“特段の事情”がない限り取り調べなければならない(慣習)∵かえって公平を損なう)。      
また,証拠調べはできるだけ集中して行わなければならず(182条),期日において当事者が不出頭の場合にも行うことができる(183条)。そして,裁判所が相当と認めるときは,裁判所外でもすることができる(185条)。

  • 証人尋問

証人を証拠方法としておこなわれる証拠調べ。

証人
裁判所から証言を命ぜられた当事者以外の第三者。ある程度の事理弁識能力があれば誰でも(⊃児童(最判昭43・2・9))なれる。

民訴法上,日本の裁判権に服するものは証人義務を負い(190条)(公務員の尋問の場合は承認が必要だが(191条1項),その承認は原則的に義務である(2項)),正当の理由がなく不出頭の場合は罰則(192,193条)があり,勾引命令が下されることもある(194条)。
証言拒絶権は,証人本人または親族等に不利な場合(196条)及び守秘義務のあるもの(197条)に認められるが,その理由を疎明して(198条),受訴裁判所の審尋(=簡易の証拠調べ)により,決定の裁判を経なければならない(199条1項。×例外→公務員の尋問)。この決定には即時抗告が可能である(2項)。正当の理由がない証言拒絶は,正当の理由がない不出頭と同様に扱われる(200条)。
証人は原則的に宣誓をしなければならない(201条。偽証罪の要件となる)。
尋問の順序は,原則的に交互になされる(202条。→交互尋問)。

交互尋問
最初に証人尋問の申し出をした当事者(主尋問),次に相手方当事者(反対尋問)。そしてまた当事者の尋問(再主尋問),また相手方当事者(再反対尋問)。最後に,裁判所がしめる(補充尋問)。

尋問は原則的に口頭で行われるが(メモもだめ(203条)),裁判所はテレビ電話や(204条),書類でも(205条)行うことができる。

  • 当事者尋問

○当事者本人を証拠方法として行われる証拠調べ。
当事者,または裁判所の職権により開始する(207条1項)。
基本的に証人尋問の規定が準用されるが,証言拒絶権はない(210条)。
大規模訴訟において,当事者に異議がなければ,受命裁判官が証人尋問・当事者尋問をすることができる(268条)。

  • 鑑定

○鑑定人の専門的知識を証拠方法として行われる証拠調べ。
証人義務と同様,鑑定義務がある(212条1項)。
鑑定手続きは,当事者の申し出によって始まり,鑑定人の指定は受訴裁判所,受命・受託裁判官がする(213条)。
裁判長は鑑定人に意見を述べさせることができ(215条1項),さらに必要なときは,職権・申立てによりさらに意見を述べさせることができるし(2項),質問もできる(215条の2第1項。順序は原則的に裁判長から(2項))。
テレビ電話でもできるなど(215条の3),証人尋問の規定が多く準用される(216条)。

  • 書証

○文書・準文書(231条)の思想的内容を証拠方法として行われる証拠調べ。
書証の申立ては文書の提出によって行われるが(219条・規137条。×例外→提出命令の申立て(221条),文書送付の嘱託(226条)),この文書と提出者の主張する作成者が一致があってはじめて「形式的証拠力」が認められ,事実の真否判断に用いることが可能(「実質的証拠力」の効果)になる。この判断は裁判所が自由心証によってする。もっとも,この証明(228条1項)は困難なこともあるため,公文書(同条2項),私文書(同条4項)に推定規定をおいている。また,筆跡・印影によって証明することもできる(229条)。相手方はこの真否を争うこともできるが,不用意に争えば過料になりうる(230条)。
文書の所持者は原則的に提出義務がある(220条1号)。例外は,文書所持者の犯罪に関する文書,公務秘密文書,守秘義務関連文書,自己使用文書(稟議書等),刑事事件関係書類である(同条4項)。この提出義務のあるものへの裁判所による文書提出命令の申立てに対する裁判は決定手続で行われる(223条1項)。審理内容は審尋(2項),監督官庁の意見聴取(3項),インカメラ審査(6項)などで,決定には即時抗告できる(7項)。
これらの結果,当事者が文書を提出しなければ,裁判所は文書についての相手方の主張を真実と認めることができる(224条)。第三者が文書を提出しない場合は,過料がある(225条)。

  • 検証

○裁判官の五感を証拠方法として行われる証拠調べ。
多く書証の規定が準用されるが(232条),220条が準用されていないことから,検証の目的物の所持者には,証人義務と同様,検証受認義務がある。

○急を要する場合の証拠調べ。
当事者の申立てによって開始するが(234条),裁判所の職権によっても開始する(237条)。訴えの提起前は証拠所在地の管轄裁判所にするが(235条3項),訴えの提起後は証拠を使用する審級の裁判所,口頭弁論期日が指定されている場合には受訴裁判所にする(同条1項)。
実務において活用されるのは,訴え提起前に抜き打ち的に証拠保全をし,これらを資料に和解がなされる場合等である。