債権者代位権

  • ●意義

債務者が自身の債務者に対する権利を行使しない場合に,債権者がその権利を自己の債権の保全のために,債務者に代わって行使する権利(423条)。

  • ♪趣旨

責任財産保全

  • ▲要件

△金銭債権であること
   ×例外→転用事例
△債務者が無資力であること
   ×例外→転用事例
一身専属権でないこと(但書)
△弁済期限の到来
   ×例外→裁判上の代位(2項)
△債権の範囲内であること

  • ▼手続

▽訴訟の場合
   第三債務者の債務者に対する抗弁は,債権者に対して行使できる。
   債権者が反論できることは,債務者自身が主張できるものに限られる。

  • ◆効果

◇債務者の権利処分制限
◇時効中断
◇債権者への効果帰属
   債権者「私に直接」→第三債務者
◇債務者への効果帰属(民訴法115条1項2号)

  • !ポイント

!転用事例
   →特定債権(≠金銭債権)の保全
   ex.
      不動産の買主が売主に代位(移転登記請求権)→現登記名義人
      債権の譲受人が譲渡人に代位(通知請求権)→譲渡人への譲渡人
      賃借人が賃貸人に代位(妨害排除請求権)→不法占拠者
      抵当権者が所有者に代位(妨害排除請求権)→不法占拠者

「抵当権と債権者代位権の関係の問題」最大判平11・11・24(奥田裁判官補足意見)
抵当権の侵害に対する救済手段として、抵当権そのものに基づく妨害排除請求権が認められるならば、更にそれ以外に、抵当不動産の所有者の有する妨害排除請求権を抵当権者が代位行使することを認めることについては、異論があり得よう。第一の問題点は、民法四二三条の定める債権者代位権は「自己ノ債権ヲ保全スル為メ」に認められるものであるところ、抵当権侵害の場合において被保全債権となるものは何かである。第二の問題点は、債権者代位権のいわゆる転用事例(不動産所有権の相次譲渡の場合における転得者による中間者の登記請求権の代位行使や、不動産賃借権に対する侵害の場合における賃借人による所有者の妨害排除請求権の代位行使)においては、権利の代位行使は、他に適切な救済手段が存しないためにやむなく認められた便法とされているのに、抵当権侵害の場合には、抵当権者について抵当権に基づく妨害排除請求権を認めることで十分ではないかとの反対論が考えられることである。
第一の点については、次のように考えられる。抵当権設定者又は抵当不動産の譲受人は、担保権(抵当権)の目的物を実際に管理する立場にある者として、第三者の行為等によりその交換価値が減少し、又は交換価値の実現が困難となることのないように、これを適切に維持又は保存することが、法の要請するところであると考えられる。その反面として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、抵当不動産の担保価値を維持又は保存するよう求める請求権(担保価値維持請求権)を有するものというべきである。そして、この担保価値維持請求権は、抵当権設定時よりその実行(換価)に至るまでの間、恒常的に存続する権利であり、第三者抵当不動産を毀損したり抵当不動産を不法占有したりすることにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられるような状態が生じているにもかかわらず、所有者が適切な措置を執らない場合には、この請求権の存続、実現が困難となるような事態を生じさせることとなるから、抵当権者において、抵当不動産の所有者に対する担保価値維持請求権を保全するために、抵当不動産の所有者が侵害者に対して有する妨害停止又は妨害排除請求権を代位行使することが認められるべきである。
第二の債権者代位権の転用事例における補充性(他に適切な救済手段がないこと)の点については、抵当権に基づく妨害排除請求権の要件及び効果(請求権の内容)につき論議が尽くされているとはいい難く、なお検討を要する点が存する現状においては、代位請求による救済の道を閉ざすべきではないと考える。