賃借権

  • ●意義

賃料を支払い,物を使用収益する契約(601条〜622条,借地借家法)。

  • ▲要件
    • <成立>

→共通
   △諾成(601条)
      20年の期間制限(604条)


→普通借地
   △30年以上(借法3条)
      定めがなければ30年
         30年未満←無効(借法9条)


→定期借地
   △50年以上(借法22条)
   △書面


→一時使用目的の借地


→普通借家
   民法604条適用否定(借法29条2項)
      →期間制限なし
   1年未満の借家契約←無期限借家とみなす(借法29条1項)


→定期建物賃貸借
   △書面(借法38条1項)
      説明も必要(2項)←なければ無効→普通借家(3項)


→取り壊し予定の建物の賃貸借
   △書面(借法39条2項)
      ↑なければ無効→普通借家

    • <更新>

→共通
(合意更新)
   △諾成
(法定更新(619条1項))
   △賃借人の使用・収益継続
   △賃貸人が異議を述べない


→普通借地
(合意更新)
   △諾成
   △最初20年以上,そのあと10年以上(借法4条←9条)。
(法定更新)
   △借地権者の更新請求(借法5条1項)or使用・収益継続(2項)+賃貸人が遅滞なく異議(更新拒絶)を述べない
      →転借地権者も同様(3項)
      ・異議(更新拒絶)に必要な事由(6条)
         ①必要とされる状況(最重要)
         ②これまでの経過
         ③土地の利用状況
         ④立退料
      更新条件=前のものと同じ(借法5条1項)

→普通借家
(合意更新)
  △諾成
(法定更新)
  △“当事者”が期間満了の6か月〜1年前までに解約申入れ(借法26条1項)+賃貸人が地帯なく異議(更新拒絶)を述べない(2項)
      →転借家権者も同様(3項)
      ・異議(更新拒絶)に必要な事由(借法28条)
         ①必要とされる状況(最重要)
         ②これまでの経過
         ③建物の利用状況
         ④建物の状態
         ⑤立退料
      更新条件=

    • <終了>

→普通借地
(合意終了)
   △諾成
(法定終了)
   △更新拒絶
      →正当事由
   △建物滅失+解約申入れ(借法8条1項)
      建物滅失後に家を新築しても同様(2項)


→普通借家
(合意終了)
   △諾成
(法定終了)
   △

  • ◆効果

◇対抗力の付与(605条)
   しかし,賃貸人の登記義務はない(∵債権)。
      →売買に負ける。
→賃借人
   ◇必要費償還請求権(607条1項)
      ⊃保存費(大判昭12・11・16)
   ◇有益費償還請求権(607条2項→196条2項)*1
   ◇賃料減額請求権(611条1項)
      それでもだめなら解除可(同条2項)
   ◇賃料支払い義務(601条)
   ◇用法遵守義務(616条→594条1項)
   ◇(終了時の)返還義務(616条→597条1項)
   ◇(終了時の)原状回復義務(616条→598条)
      ただし,造作買取請求権の行使もありえる。

賃借物に対して直接的に支出した必要費・有益費は当然に費用償還請求権の対象となるが,取り外し可能なものについて↑のように問題になる。

   ◇(賃借権の譲渡・転貸の場合)賃貸人の承諾を得ること(612条1項)
→賃貸人
   ◇(賃借権の無断譲渡・転貸の場合)解除権(612条2項)
      背信的行為の場合に限る(最判昭28・9・25)
   ◇使用収益させる義務(601条)
   ◇賃貸物修繕義務(606条)
      修繕しない場合はその分の賃料支払い拒絶権発生(大判大10・9・26)。
      「一定の範囲において」修繕義務のない旨の特約は有効(最判昭29・6・25)。

  • ?問題点

?敷金の性質
   :賃貸借契約における継続的保証金(cf.316条,619条)
   賃料延納→敷金から当然充当(大判大15・7・12)
      賃借人側からは↑を主張できない(大判昭5・3・10)が,明け渡し時には賃料債権も敷金からの充当によりその限度で消滅する(最判平14・3・28)。
?承諾転貸の場合の法律関係
   転借人は賃貸人に直接的に「義務」を負う(613条)(∵賃貸人保護)
      「権利」はない
   賃貸人と転貸人の契約が,
      合意解除された場合
         →転借人は賃貸人に対抗できる(∵転借人保護)
            →転借人は転貸人の地位を引き継ぐ
      債務不履行により解除された場合
         →転借人は賃貸人に対抗できない(∵賃貸人保護)
            →転借人は転貸人に債務不履行責任を追及できる
?無断転貸の場合の法律関係
   転貸人と転借人の当事者間では有効(大判昭2・4・25)
      →他人物売買規定の類推適用
   賃貸人は転借人への,
      所有権に基づく妨害排除請求
            or
      不法行為に基づく損害賠償請求
?二重賃借
   対抗要件主義
?二重転貸
   対抗要件主義
      しかし,賃貸人の承諾が必要。
         ∴対抗要件主義の形骸化

  • !ポイント

借地借家法による修正
!信頼関係の重視(∵継続的契約)
   信頼関係が破壊されていなければ,信義則により解除は制限される(最判昭39・7・28)。
        ↓一方で↓
   信頼関係が破壊されれば,催告(541条)を要せず解除可(最判昭27・4・25)。
        ↓そして↓
   双方の中間の態様として,541条をそのまま適用することもある。

*1:2 占有者カ占有物ノ改良ノ為メニ費シタル金額其他ノ有益費ニ付テハ其価格ノ増加カ現存スル場合ニ限リ回復者ノ選択ニ従ヒ其費シタル金額又ハ増価額ヲ償還セシムルコトヲ得 但悪意ノ占有者ニ対シテハ裁判所ハ回復者ノ請求ニ因リ之ニ相当ノ期限ヲ許与スルコトヲ得