国籍

● 意義

国家の所属員としての法的資格。
国内管轄事項だが,各国がまったく恣意的に国籍を定めていいということではない。


■ 国籍の取得

国籍は社会契約説≒自己決定権により自由に選択できる(国籍自由の原則)。

  • 生来取得

血統主義生地主義に分かれる。
血統主義は父系血統主義から両系血統主義へ。
ここにおいては国籍自由の原則は擬制にすぎない。

  • 後天的取得

代表的なものは帰化
帰化
   個人の申請に対する国家からの国籍の付与。


■ 重国籍・無国籍

無国籍が好ましくないのは明らかである一方,重国籍も積極的には是認しがたい。
元来,単一国籍原則はこの重国籍を問題視してきたが,無国籍よりはましということで,国籍自由の原則や実行国籍の原則(国籍法抵触条約5条・6条)などによって治癒し,現在,消極的には是認されている。


■ 国籍の機能

国籍は人に国民としての地位として,具体的権利義務関係を与える。

  • 国際社会における一国への帰属

国家の属人的管轄権により,外交的保護権や出入国の自由など。

  • 政治共同体としての国家の一員

参政権や兵役義務。

  • 社会共同体としての国家の一員

社会保障や大規模不動産所有。


領土が変われば国籍も変わるのが原則だが,民族自決権の一環として,あるいは人権の観念により国籍処理がされるようになってきている。


■ 外国人

外国にいる自国民には対人主権が及ぶため,領域主権と対人主権の調整が必要となる。
それを実現する手段が通商条約だが,「文明国標準」で組み立てられていたため,在外自国民保護の名目でしばしば武力威嚇・武力行使に至った。
そこで,二次大戦後この文明国標準は国際人権法の基準によることとなり,武力行使の合法性も考え直された。

外交保護権(外交的保護)
  • ●意義

自国民が他国によって財産・身体を侵害されて損害を被った場合に,その者の本国が加害国に適切な救済を与えるように要求する権利。
国の権利であって国民の権利ではないため,国民は放棄できない。
国力によって外交保護の成否が決するため,弱小国にはあまり意味がないともいえる。
逆に,アメリカは絶大な力を持つため,ラテンアメリカ諸国はカルボ条項により外交保護の不要請を定めるが,外交保護権は国の権利であるため,効力は妨げられないと考えられる。

  • ▲要件

△1:実効国籍の存在
   ノッテボーム
△2:損害〜救済までの間に国籍が継続すること(国籍継続の原則
△3:被害者が在留国での国内救済の手段を尽くしていること(国内救済の原則
   領域主権尊重の現われ
      ∴領域管轄外 or 国家自身の権利侵害には適用されない
   →主に裁判
      ↑必ずしも審級を尽くす必要はなし