解雇

● 意義

使用者による労働契約の解約。クビ。
民法627条は解雇の自由を定めるが,労働者の地位安定のために諸々の規制がある。
★契約満了の雇い止めにも類推適用(最判昭61・12・4百選85)
   →雇い止め無効 →有期契約の自動更新
   @1:労働契約の反復更新の存在
   @2:ある程度の継続期待の存在


■ 規制

  • 解雇権濫用法理(18条の2)

★「寝坊してニュースをとばす」最判昭52・1・31百選82
<事実>
高知放送のアナウンサーXは,2月に1回,3月に1回それぞれ寝坊のために朝のニュースをとばしてしまった。3月の事故では,事故報告書の提出をせず,部長に求められて報告書を提出・・・したが,事実と異なる内容だったため,高知放送はXを解雇。
<判断>
Xの行為は就業規則の解雇事由に当たるが,使用者は常に解雇しうるものではなく,当該具体的な事情の下において,解雇に処することが著しく不合理であり,社会通念上相当なものとして是認することができないときには,当該解雇の意思表示は,解雇権の濫用として無効となる
本件事故でXに非がないということはできないが,Xより先に起きてXを起こす役であるファックス担当者も寝坊していたし,その他諸々の事情の下では,解雇は苛烈にすぎ,必ずしも社会的に相当なものとして是認することができない。
<メモ>
この判例などにより,濫用法理が判例法化。さらに,平成15年に労基法に取り込まれる。

第18条の2  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

・合理的理由
   1:労働者の無能力
      ★平均的基準に満たないというだけでは不充分(東京地決平11・10・15)
         どこに行っても使いものにならないというくらいでないとだめ
   2:労働者の規律違反
   3:リストラ
      →実体的必要性
         a:本当に会社は傾いているか
         b:本当に彼・彼女じゃないとだめなのか
            勤務状況・年齢‥
      →手続的必要性
         c:ちゃんと協議・話し合いをしたか
         d:ちゃんとリストラじゃない手段を探ったか
            配転・レイオフ・希望退職‥
            →解雇回避努力義務

?どのように判断されるか。
会社が置かれた具体的状況の下,会社がどのような手順を経て解雇に至ったかが判断されることになるだろう。例えば,会社が本当に傾いている場合などには,配置転換等を試みず一発で指名解雇をしてもやむをえない場合もあるだろうが,会社が儲かっているときにそれをやってしまうと回避努力義務を怠ったと評価しうる。

・無効となった場合の賃金
   民法536条により,解雇がなければ確実に支払われたであろう金額が支払われる。

?解雇期間中に,労働者が他のところで働いていた場合はその賃金分を控除することができるか。
労働者は解雇期間中に労働をしないことにより,他の事業所で働くことができ,それにより収入を得たことになるのだから,民法536条2項の「自己の債務を免れたことによって利益を得た」場合にあたるため,償還が必要であるように思える。しかし,休業手当は6割以上の支払が義務付けられているのだから(労基法26条),労働者は,解雇がなければ確実に支払われたであろう金額の6割を超える分については,償還が必要であろう。

・解雇事由は就業規則の絶対的記載事項(89条3号)
・解雇理由の交付義務(22条2項)
   http://www.miyarou.go.jp/download/kaiko_youshiki.html
・懲戒解雇よりも普通解雇のほうが緩い
   ∵性質の違い
・故意・過失があれば不法行為にもなりうる

  • □ 解雇予告(20条)

30日前にする必要がある
   ↑民法(14日。627条1項)より長い
適用除外(21条)

?予告をせずに解雇した場合の効力如何。
解雇予告が労働者の生活の安定を趣旨とするものであることにかんがみれば,有効・無効の主張は労働者の選択に委ね,解釈によって決することはしないほうがよい。労働者が働きたいのであれば解雇無効を主張し,そうでなければ解雇有効に基づく予告手当ての請求をなすべきである。
  • □ 業務災害・産休の場合(19条)
  • □ その他