財政
● 意義
国家がその任務を行うために必要な財貨を入手・使用・管理する作用(憲法7章,財政法)。
■ 原則
- 財政民主主義(83条)
:財政に関する最も基本的な原則
民主的コントロール → 予算(歳入・歳出)+決算
- 租税法律主義(84条)
:租税を課すには国民の同意を得なければならないという原則の背面的規定
=歳入面からの財政民主主義規定
∵民主主義→法律→租税
・租税
- ?租税とは何か。
- 国・地方公共団体が,課税権に基づき,特別の役務に対する反対給付としてではなく,経費として使用するために強制的に徴収するものをいう。
- ?司法試験受験料は租税にあたるか。
- 広義の租税にあたる。司法試験受験料といえども,適正な額である必要があり,そのためには民主的コントロールを及ぼす必要があるため,こう解する必要がある。
・法律
→租税要件法律主義
何に,どれだけ,税金を課すか,など。
→課税手続法律主義
どうやって,税金を課すか。
→課税要件明確主義
上記2つの明確性の要求。
- ?通達により課税要件を変更することは可能か。
- それ自体法律の正確な解釈に基づくものであれば可能である。もっとも,恣意的になされたのであれば,そうともいえない場合もあろう。
- 国費支出議決主義(85条)
:国費を支出するには,国会の議決を必要とする原則
=歳出面からの財政民主主義規定
■ 予算・決算
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/syukei.htm
- 予算(86条)
- ?予算は法律なのか。
- 民主的な規範定立という面においては法律だが,予算は一般国民を拘束するわけではないし,憲法上も特殊な扱いがされていることにかんがみれば,芦部説のように特殊な法形式と見るべきだろう。
- ?そうすると,他の法律と予算が別次元に存在することになり,法律と予算の不一致が生じる。予算があるのに法律がない,あるいは法律があるのに予算はない場合にはそれぞれどう対処すべきか。
- 前者の場合,法律がないのだから予算の執行=支出はできないことになるだろう。この場合,内閣は国会に法律制定を働きかけるほかない。後者の場合,内閣は法律を誠実に執行しなければならない(73条1号)のだから,補正予算や予備費の支出,あるいは法律の施行を延期するなどで対処するしかないだろう。
- 決算(90・91条)
■ 公金支出の禁止(89条)
http://www.aa.alles.or.jp/~rchiba/89.htm
- 前段
政教分離原則の財政面からの保障を中心とした公費濫用防止規定
- ?「宗教上の組織若しくは団体」は何を指すか
- 宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織・団体である。本条前段の趣旨は,政教分離原則の財政面からの保障であるから,宗教的活動が必要である。
- 後段
- ?趣旨は何か
- 公費濫用防止を中心とした,私的団体の中立性確保である。本条は財政の章にあるため,公費の濫用を防止するための規定であると解することができ,また,前段との関係で,同等の立場にあるべき私的団体の差別防止が図られていると解することができる。
- ?「公の支配」とは何か
- 国・地方公共団体の一定の監督が及んでいるということである。本条の趣旨は,公費の濫用防止にあるが,この程度の支配が及んでいれば公費の濫費は防ぐことができる。
- ?だとすれば私学助成金は合憲か
- 合憲である。私立学校には,文部科学省の監督が及んでいる。
- ?NPOに対する補助金はどうか
- 合憲である。補助金の交付には国・地方公共団体の審査があり,その点で「公の支配」が及んでいるといえる。