人事異動
■ 配転
● 意義
職務内容・職務場所の相当長期間に及ぶ従業員の配置の変更。
単なる勤務箇所の変更は配置転換という。
■ 根拠・限界
使用者には人事権があり,その一環として労働者の職務内容や勤務地を決定する権限(配転権)を見出しうる。そして,それは就業規則においても表現される。もっとも,この権限は,それぞれの労働契約によってさまざまであり,一概には決しえない。
- ?学説上主張される包括的合意説と契約説はどちらが妥当か。
- これら2説は双方の内容を包含するので,対立的ではない。よって,包括的合意説のいう権利濫用法理による権限の制限,および契約説のいう労働契約上の制限のどちらも有用である。
□労働契約による制限
★「波乱万丈」東京地決昭51・7・23
<事実>
申請人の村上節子氏は早稲田大学第一文学部国文学科を卒業後,アナウンサーとして日本テレビに入社。ある番組を担当していたとき,ジャーナリストの田原総一郎氏と知り合い,結婚。その後,「村上」節子としてウーマンリブ運動に参加するなどしていたが,会社からアナウンサー以外の職への配置転換を命じられた。
<判断>
申請人は大学時代から放送研究会アナウンス部に所属し,専門的な技能を磨き,難関であるアナウンサー試験に合格し,これまで一貫して18年間アナウンス業務に携わってきた経緯などによれば,労働契約はアナウンス業務のみであるといえる。
<その後>
村上氏はこの後,プロデューサーとして同社に10年間勤務した後,退社。一旦は離婚した田原総一郎氏と再婚し,今度は「田原」節子として田原事務所の代表を務める。さらにその10年後,がんを患い,闘病の末,2004年に他界。
http://www.atc.ne.jp/seikindo/html/watasitachinoai.htm
□権利濫用法理による制限
★「日本電気事件」東京地判昭43・8・31
<事実>
兄は癲癇,妹は心臓弁膜症,母は高血圧症という3人の面倒を見る労働者へ転勤命令。
<判断>
この転勤命令は,その必要性と家族に対する非代替性を比較考量すれば著しく均衡を逸したもので無効である。
<整理>
業務上の必要性と,(労働者の)生活上の不利益,を比較考量。
■ 出向
● 意義
労働者が雇用先企業に籍を置いたまま,相当長期間にわたって他の企業の事業所で業務に従事すること。
籍が移る場合は,転籍(移籍)である。
■ 根拠・限界
出向は配転とは違い,指揮監督者の変更がある。このため,配転が包括的合意のみの要件を設定するとしても,それをそのまま出向に当てはめることはできない。
- ?ではどうすればいいのか。
- 個別具体的事情をもって決するほかない。例えば,採用の際に転籍先企業の名前をあげ,転籍がありうる旨の説明があれば,転籍命令を有効と解する余地がある。
□労働契約による制限
□権利濫用法理による制限
業務上の必要性
生活上の不利益
労働条件上の不利益
→給料が下がる!など