司法

tgls332005-11-23

● 意義

法規を適用することにより,具体的争訟の解決を図る国家作用(憲法6章,裁判所法)。
司法権裁判所に属する。

  • 法律上の争訟

具体的争訟=法律上の争訟

第三条 (裁判所の権限)  裁判所は、日本国憲法 に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

?法律上の争訟とはなにか
司法権とは,具体的な争訟について,法を適用し,宣言することによって,これを裁定する国家作用である。具体的な争訟とは,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟であり,この法律上の争訟とは,①当事者の具体的な権利義務等に関する紛争であり,②それが法律を適用することにより終局的に解決することができるものでなければならない。

★「板曼荼羅最判昭56・4・7百選196
<事実>
創価学会の会員であった原告が,寄付金の返還を求めた事件。理由は,その原因となった「板まんだら」は,実はニセ物であり,寄付は錯誤無効であるため。
<判断>
本件は,宗教上の教義に関する判断を避けて通れず,法令の適用による終局解決は不可能なものであるから,「法律上の争訟」ではない。

法律上の争訟に該当しても,例外的に司法判断がされない場合がある。
□1:自律権に属する行為
   自律権:国会・各議院の内部事項について自主的に決定できる権能

★「( ^ ^ )Y」最大判昭37・3・7百選192
<事実>
警察法改正をめぐる与野党の激しい攻防の中,与党は会期延長を宣言した。この無効が,住民訴訟を通じて争われた。
<判断>
裁判所は両院の自主性を尊重すべく,議事手続きに関する事実を審理して有効無効を判断すべきではない。

□2:自由裁量に属する行為
□3:統治行為
   :直接国家統治の基本に関する高度に政治性ある国家行為

?統治行為は認められるか
認められる。確かに統治行為といえども,「法の支配」の原則のもと,司法権の範囲内にあるため,認められないとも考えられる。しかし,国民主権原理(前文)のため,典型的民主的機関である国会・内閣の政治的判断を,裁判所は尊重すべき立場にある。これは,三権分立制度や民主主義的責任原理を源流とする内在的制約である。
?しかし,明文の規定もなく不明確な概念である
そのため,範囲は厳しく限定される必要がある。具体的には,①自律権・自由裁量権で説明できる範囲は除外し,②民主制の前提である基本的人権・精神的自由権に関するものには適用しない,ことが求められる。

★「統治行為論?」最大判34・12・16百選203
<判断>
安保条約の内容の判断は,国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断であるため,司法裁判所の判断にはなじまない。したがって,一見極めて明白に無効であると認められない限りは,司法審査権の範囲外にある。
<整理>
「一見極めて明白に無効」である場合には,司法審査は可能であるとしたので,純粋な統治行為論ではない。が,後の苫米地事件で,統治行為論を真正面から肯認した。

□4:団体の内部事項に関する行為
   純粋な内部事項に関する行為は,司法審査が及ばない(「部分社会の法理」)。
      ↑理由は個別具体的に考えるべき(20・21・23条等)

地方議会議員に対する懲罰決議に司法審査が及ぶか
除名処分には及ぶが,出席停止には及ばない。除名処分は,一般市民秩序に関連する重大な処分であるが,出席停止は地方自治の自律性を尊重すべきで,裁判よるのは必ずしも適当ではない。
?一般市民秩序に関連すれば,すべて司法審査は及ぶのか
そうとも限らない。たとえば,政党のように自ずと高度の自律性を要求される団体の場合,私的自治の観点から,公序良俗民法90条)に反しない限りは,その判断を尊重しなければならない場合もある。このような場合,一般市民秩序に関連するとはいえども,司法審査は及ばない。

■ 組織と権能

・特別裁判所の禁止(76条2項)

?行政審判の実質的証拠法則は76条2項に反するのではないか
確かに,裁判所の権限には,法令適用の前提として,事実認定の権限も含まれるから,行政機関の認定した事実が裁判所を絶対的に拘束すれば,行政機関が特別裁判所となり,76条2項に反するとも考えられる。しかし,実質的証拠法則は,裁判所を絶対的に拘束するわけではなく,内容のみを裁判所を拘束し,事実の有無は裁判所が行うことができるから,76条2項には反しない。

   ≠家庭裁判所最大判昭31・5・30百選186)
・国民審査
・規則制定権
   最高裁判所は,列挙事由(77条1項)に関する規則を制定できる。

?規則と法律はどちらが優先するか
法律である。確かに,規則制定権の趣旨は,裁判所の自主性・専門性の尊重であるため,規則が優位するとも見うるが,①国会が唯一の立法機関であること(41条),および②刑事訴訟に関する事項は法律で定めることが要求されていること(31条),などにかんがみれば,法律が優位する。
?では,刑事手続きもすべて法律で定めなければならないのか
原則的にはそうである。ただし,その細目については,その専門性のため,規則と法律の重畳的所管に属する。このため,すべて法律で定めなければならないわけではなく,法律が定めていない箇所については,規則で定めることができる。

・裁判の公開
   原則として公開(82条1項)
   「公の秩序・善良の風俗」→非公開可
   「政治犯罪・出版犯罪・3章の問題」→絶対公開
   公開=傍聴の自由⊃報道の自由⊃メモの自由
   ・制限
      @刑事→写真撮影・録音等←要許可(刑訴規215条)
      @民事→速記←要許可(民訴規11条)
裁判員制度
   法務省


司法権の独立

公正な裁判

★「裁判官の政治活動」最大決平10・12・1百選189
<事実>
仙台地方裁判所の判事補Yは組織的犯罪対策法案に反対する市民集会に参加し,職名を明らかにした上で,暗に法案反対の意思を表明。これに対して仙台高裁は裁判所法を根拠にYを懲戒処分。
<判断>
裁判官は独立して中立・公正な立場に立って職務を行う必要があるが,その中立・公正性は外見上も,そして私人としても要求される。もっとも,表現の自由は裁判官にも及ぶが,憲法上,制約を受けることがあり,その制約が合理的でやむをえないものである限り,憲法上は許容される。

□広義の独立
   立法権・行政権からの独立
□職務の独立
   裁判官の職務上の独立
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