国会

tgls332005-11-16

● 意義

国民を代表する選挙された議員で構成される,国権の最高機関で,唯一の立法機関(憲法4章)。


○1:国民の代表機関(43条)
   :議会は国民代表で構成されるという近代憲法の原則確認。

?43条1項は「全国民を代表する」とするが具体的にはどういう意味か
議員は選挙民の意思に法的には拘束されないという自由委任の趣旨において,全国民を代表するという政治的代表の意味である。法的拘束力がない点は51条の免責特権が確認する。ただし,議員が全国民を代表するとすれば,議員の行動すべてが全国民を代表していることになり,代表の意味は「形式的代表」となってしまうから妥当ではない。「実質的代表」の側面から,議員は国民の意思をできる限り忠実に反映するという概念(社会学的代表)も含意すると解する。
?では「党議拘束」は自由委任に反しないのか
自由委任とは議員が選挙民に法的には拘束されないという意味であり,また政党は国会において主導的役割を果たすから,むしろ国民意思の反映には不可欠なものである。したがって,自由委任には反しない。
政党 は憲法的には公認されたものではないが,法的には公認されている(公職選挙法・国会法・政党助成法・政治資金規正法など)。それは,政党が国民の政治意思を形成するもっとも有力な媒体(最大判昭45・6・2)であるという理由によるが,ややもすれば,法律を作るはずの政党が法律に支配されてしまう,という奇怪な状況も生じうる。「戦う民主主義」の下では,このような状況も是認されようが,程度問題であろう。


○2:国権の最高機関(41条前段)

三権分立なのに最高機関とはどういうことか
国会が国民と直結し,立法権等重要な権能を有することから,国権の中心的地位を占める機関であることを強調する「政治的美称」にすぎない。


○3:唯一の立法機関(41条後段)
   :立法権の国会による独占。
   ・立法

?「法律」の名がつけばすべて立法になるのか
だとすれば国会以外の機関にも「実質的立法」を許してしまうことになる。したがって,この際の立法こそが「実質的立法」の意味であるから,「法律」の名がつけばすべて立法になるのではない。
?その「実質的立法」とはどういう内容なのか
伝統的には「国民の権利・自由を直接に制限し,義務を課す法規範」であると考えられていたが,民主主義の理念の実現のための概念としては狭きに失するため,一般的・抽象的な法規範も含むと解するのが妥当である。この一般性によって平等が確保され,抽象性によって予測可能性が確保されることとなる。
?であれば,個別の「措置法」は平等を侵すことになる
実質的平等のために,合理的差別を行うことは福祉国家において要請されているから,この見地から平等原則(14条)に抵触しなければよい。
?しかし,「措置法」は具体的処理を行っているから,実質的には法規範の執行であって,その面で行政権を侵しているのではないか
確かに「立法機関」が措置法を制定することは行政権を形式的には侵していると考えられる。しかし,内閣も国会に法案を提出し,国会も委任立法により行政に規範定立権を与えている。このような協力関係が存在する実態において,「侵した」「侵されない」という問題を論ずる実益はない。したがって,このような協力関係が破壊された場合に,「憲法上の関係」の破壊がはじめて問題となるのであって,現状では行政権を侵していることとはならない。

   ・唯一
      :①国会以外による実質的意味の立法は,憲法に定めがある場合を除いて許されない(「国会中心立法原則」)。
      :②国会による立法は,国会以外の関与を必要としないで成立する(「国会単独立法原則」)。*1

?委任立法は国会中心立法原則を潜脱しないか
現代の福祉国家においては国家の役割が増大し,それにともない立法にも専門性・即応性が求められるようになったため,必要性の観点から許容しうるし,委任立法の存在は76条6号但書も前提としている。
?だとしてもまったくの白紙委任では問題である
そのため,委任には立法者のコントロールをおよぼさなくてはならないから,「目的」と「基準」を具体的に定めなければならない。

★「公務員の政治行為と委任立法(猿払事件)」最大判49・11・6
<事実>
北海道の日本最北端の村・猿払村の郵便局員が選挙ポスターを公営掲示板に掲示したため,国家公務員法(内容は人事院規則に委任)に反するとされた。
<争点>
国家公務員法白紙委任ではないか。
<判断>
政治的行為を具体的に定めるように委任しているから,合憲である。

?内閣の法案提出は国会単独立法原則に反しないか
反しない(内閣法5条)。現代の福祉国家においては国家の役割が増大し,それにともない立法にも専門性・即応性が求められるようになっているため,法案提出権を認める現実的必要がある。また,国会もその法律案を自由に修正ないし否決することができる。
?「両議院で可決したとき法律となる(59条1項)」といった場合の「公布」と「施行」の関係を述べよ
「法律となる」とは法律として確定し,潜在的効力が発生したことであり,効力が発生するのは「施行」のときである。また,「施行」以前に国民に知らせる必要があるから,「公布」が必要である。
?公布日=施行日であれば,国民に対する不意打ちになるのではないか
公布は官報によって行われるから,その官報を国民が閲覧・購入しようとすればなしえた最初の場所に官報が到着した時点が,公布・施行の時点である(最大判昭33・10・15)と解すれば,不意打ちではない。

■ 国会の組織&活動

  • 二院制

国会は衆議院参議院の二院で構成される(42条)。
二院制の存在理由は,それぞれの院のキャラクターを分けることによるリスクヘッジや,肌理細やかな民意の反映がある。
メインとなるのは,衆議院(下院)であり,憲法衆議院内閣不信任決議案・予算先議権などにおいて優越を認めている。

参議院不要論 キャラ分けが不明確であれば,二院制の意味がない。しばしば日本では参議院不要論が唱えられるが,これは,連邦型二院制や貴族院型二院制などに比べ,民主的二院制はキャラ分けが不徹底だからである。このため,参議院不要論にももっともな理由はあるが,参議院のキャラを強くすれば,改めて存在意義を見出すこともできる,参議院不要論を撥ね返すこともできる,といえる。

公職選挙法(←憲法47条など)に定めがある。
日本の選挙 - Wikipedia

  • 国会議員の地位

国会議員は全国民の代表者として重要な権能を行使するため,以下2つの特権が認められる。
不逮捕特権(50条)
   ¬⊃現行犯逮捕

?この特権の趣旨は何か
ひとつに議員の自由の確保,もうひとつに議院の審議権の確保にある。

発言免責特権(51条)
   ¬⊃暴力行為
   ¬⊃名誉毀損的発言

  • 国会の活動

□会期
   ・常会(52条)
   ・臨時会(53条)
   ・特別会(54条)
      総選挙後に召集される会
   会期不継続の原則(国会法)
□(参議院の)緊急集会
□会議の原則
   ・定足数の原則
      総議員の3分の1@議事・議決(56条1項)
   ・表決数の原則
      出席議員の過半数(56条2項)
   ・公開の原則
      57条1項本文


■ 国会の権能

  1. 憲法改正発議権
  2. 法律の議決権
  3. 内閣総理大臣の指名権
  4. 弾劾裁判所の設置権
  5. 財政監督権
  6. 条約承認権

条約:文書による国家間の合意
条約の締結権者=内閣(73条3号)
   具体的には,全権委員の「調印」+内閣の「批准」(←要天皇の認証(7条8号))。
条約の承認権者=国会
   事前承認が原則

?事後に承諾が得られなかった条約の効力はどうなる
国内法的にも国際法的にも無効である。なぜなら,条約に国会の承認が必要なのは,今日の民主国家に共通することであり,このことは相手国も承知のはずであるから,相手国の信頼を損ない,また法的安定性を害するということもない。
?承認に際し,国会は条約を修正できるか
条約締結行為全体において,国会が関与する範囲は広いから,その中で条約を修正することは許される。もっとも,締結するのは内閣だから,修正された条約の再交渉は,内閣に一応義務付けられるにとどまる。
?その再交渉で相手国が同意しなければどうなる
事前承認の場面では,国会の承認が得られなかったことになるから,条約は不成立となる。同様に,事後承認の場面でも,国会の承認が得られなかったことになるから,国内法的にも国際法的にも無効である。

■ 議院の権能

  • 議院自律権

:各議院が他の国家機関や他の議院から干渉を受けず,その組織・運営等に関する事項を自主的に決定できる権能。
□1:組織に関する自律権
   ①会期前に逮捕された議員の釈放請求権(50条)
   ②議員の資格争訟の裁判権(55条)
   ③役員選任権(58条)
□2:運営に関する自律権(58条2項)
   ①議院規則制定権
   ②議員懲罰権

?国会法と議院規則が矛盾・抵触した場合はどちらが優越するのか
国会法である。国会法は両議院に共通する事項を定めており,そのために成立には両議院の議決を必要とする。これに対して議院規則は各議院単独の議決によって成立する。したがって,内容においても,成立過程においても,国会法が優越するのは明らかである。

:国政について調査を行う議員の権能。

?何のためにこのような権能が認められているのか
本来的に議院に与えられた権能に,実効性を付加するため認められている(補助的権能)。国会は国権の最高機関である(41条)ことのコロラリーとして認められるとする見解(独立権能説)もあるが,そもそも最高機関であるというのは政治的美称にすぎないのだから,妥当ではない。

□1:司法権との関係
   司法権の独立とは,裁判官が法的な面において他の国家機関から独立しているという意味ではなく,実質的に重大な影響を受けないという趣旨を包含する(民訴法247条)。
   ∴裁判内容の調査は許されない。が,事実関係そのものの調査は許される。
   cf. 浦和事件←→ロッキード事件
□2:検察権との関係
   検察権は準司法作用だから,司法権に類似した独立性が認められる必要がある。
□3:一般行政権との関係
   行政権が内閣に従属するのだから,割と広く及ぶ。
□4:人権との関係
   当然に制約がある。

*1:明治憲法は①で行政権による立法(独立命令,緊急命令)を認め,②で天皇に裁可権を認めていた。