留置権
● 意義
他人の物の占有者が,その物に関して生じた債権を有する場合に,その債権の弁済を受けるまでその物を留置し,弁済を間接的に強制することのできる法定担保物権(民法2編7章=295条〜302条)。
附従性・随伴性・不可分性(296条)がある。
- ♪趣旨
♪取引当事者の公平
▲ 要件
第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
△他人の物の占有者
債務者とは限らない
不動産の場合は登記は不要
△物に関して生じた債権があること(目的物と債権の牽連性)
賃借家屋の必要費(大判昭14・4・28)
賃借家屋の有益費(大判昭10・5・13)
建物買取請求権(大判昭14・8・24)
¬造作買取請求権(最判昭29・1・14)
∵造作に関して生じた債権≠建物に関して生じた債権
- ?有益費が認められることとのバランスが取れないのではないか
- そうともいえないだろう。有益費は建物に直になされる工作であるのに対して,造作は建物に対する「付加」である。そうすると,一般的には有益費のほうが高額になるのに対して,造作はそうではない。したがって,造作買取請求権に留置権を認めるのは趣旨である取引当事者間の公平に適わないことになる。
¬敷金返還請求権(最判昭49・9・2)
△弁済期にあること
△不法行為によって始まったものではないこと
悪意・重過失に類推適用(最判昭51・6・17等)
◆ 効果
◇留置的効力
=占有の継続 ←保存行為まではできる(298条2項)
⊃借家人の居住(大判昭10・5・13)
¬⊃借地の第三者への賃貸(大判昭10・12・24)
留置物から発生する利益 ←不当利得(大判昭10・5・13)
◇担保権の実行としての競売
優先弁済権はない。
◇留置物の必要費 ←費用償還(299条)