基本的人権

● 意義

人が人であるがゆえに当然に有するベーシックな人権(憲法11条・97条)。
人が人であるがゆえに当然に有する ←固有性
公権力によって侵されない ←不可侵性
あまねく・平等に認められる ←普遍性
自由権
   国家からの自由を享受する権利
社会権
   国家による自由を享受する権利
参政権
   国家への自由を享受する権利
受益権


▲ 要件

第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

△国民であること
   ⊃天皇
   ⊃法人

★「法人の人権――八幡製鉄事件」最大判昭45・6・24百選10
<事実>
現在の新日本製鉄である当時の八幡製鉄代表取締役Yは,同社の名義で自民党に350万円の政治献金を行った。この政治献金について,株主のXは会社の定款外の行為であり,同時に商法上の忠実義務に反する行為でもあるとして株主代表訴訟を提起。
<上告理由>
1 商法54条,民法43条を文理解釈すれば会社は一切の寄付すらできない。もっとも,会社は社会的存在であるから,社会への利益還元のため,慈善事業への寄付をすることはできるが,政党への寄付は,慈善事業への寄付とは違い,時には有害ですらある。したがって,やはり会社は政治献金をすることができない。
2 国民とは自然人をいうのであって,このことは選挙権(参政権)が自然人にしか与えられていないことからも明らかである。であるのに,会社に政治献金の権利能力(参政権)を認めることは,国民の参政権を侵犯することになり,違憲である。
<判断>
・1
定款の解釈は客観的・抽象的にすべきであるが,これによると,八幡製鉄の政治献金は定款の範囲内の行為である。
・2
憲法上の参政権は,自然人にしか認められていないのはいうとおりである。しかし,法人も納税者として義務を負担し,憲法3章の権利も性質上可能な限り内国の法人にも及ぶと解すべきだから,会社には政治行為の自由がある。この行為が国民の参政権を侵犯するといっても,どのような参政権を侵犯するのかは明らかでないし,また,会社の政治献金が政治腐敗等の問題を生むとしても,それと政治行為の自由とは別の問題である。
<整理>
これに関連して,最高裁は強制加入団体の税理士会が政治献金のために金員徴収決議をすることは定款の範囲外(最判平8・3・19)で,強制加入団体の司法書士会が阪神大震災の復興のために負担金を徴収することは定款の範囲内(最判平14・4・25)であるとしている。

   ⊃外国人

?外国人にも人権の保障が及ぶのか
そもそも人権とは,その普遍性により,平等にあまねく認められるものであり,また,憲法が国際協調主義を採用していることにもかんがみれば,絶対的に「国民」の文言に左右されるものではない。人権の保障は外国人にも及ぶ。もっとも,「将来の国民」という文言から外国人を読み込むことも可能だろう。

      ・範囲

?範囲はどうか
憲法が保障するすべての人権が外国人に及ぶと解することは困難である(たとえば,国籍離脱の自由)。したがって,範囲・程度については権利の性質による限定が付される。

         ・参政権

?外国人に国政選挙の選挙権は認められるか
外国人は自国の選挙権を有しているのが通常であるため,日本国の国政選挙の選挙権を与えてしまうと,二重に選挙権が与えられることになってしまい,日本国民に対して法の下の平等を侵す。したがって,憲法上認められない。
?しかし,地方選挙の場合はどうか。ここでは,外国人は,日本人と同様に,税金を負担し,日本人となんら変わらず,住民として生活している
93条2項の「住民」という文言もあり,地方参政権に関しては必ずしも「国民」という要件が必要とはされず,したがって,外国人にも地方参政権を認めることは可能であると考える。
?そうすると国民主権の原理に反する
国民主権は国政レベルのことをいうのであって,地方自治の本旨である住民自治にかんがみれば,外国人に地方参政権は認められることになる。

         ・公務就任権

★「外国人の公務就任権――東京都管理職選考事件」最大判平17・1・26
<事実>
被上告人X=昭和25年に岩手県で出生した韓国人で,日本の特別永住者
上告人Y=東京都。
Xはすでに東京都に保健婦として採用され,さらに管理職選考を受けるため受験申込書を提出しようとしたが,受理されなかった。もともと,保健婦の採用には明文で日本国民であることを要しない旨の定めがあったが,管理職選考には明文の定めがなかった(が,日本国民であることを要するという「前提」があった)。そして,管理職の職務内容は,管理的な職でないものもあるが,終始そのような職務だけに任用されるものではなく,いずれ管理的な職につくこともあるとされていた。
このような事実関係の下,Xは受験申込書が受理されなかったことを理由に慰謝料を請求。
<原審>
日本国籍を有しないもの(外国人)には管理職への就任権が認められないが,管理職の内容にもいろいろあるのであり,統治作用とのかかわり方によって,外国人に就任が認められない管理職と,認められる管理職がある。したがって,上告人の管理職について,一律に,外国人の就任を認めないとするのは相当でなく,外国人に就任が認められる管理職と,認められない管理職を区別して任用管理する必要がある。これに違反した取り扱いがなされた本件は,憲法14条1項・22条1項に違反する。
<判断>
労基法地方公務員法は勤務条件につき,国籍を理由とした差別を禁止するが,合理的な差別までを禁止するものではない。そこで,問題は,東京都の任用制度にこの合理性があるかどうかだが,公権力行使等地方公務員は,国民主権の原理に基づき,外国人の登用は予定していないと解すべきであり,また,公権力を行使する職とそうでない職を包含して任用管理することもできると解すべきだから,上記措置に違法はない。

         ・社会権
         ・出入国の自由

出入国の自由は外国人に保障されるか
出入国の規制は国家の裁量にあり,人権ではない。もっとも,裁量が逸脱すれば違法になりうる。

      ・程度
   ⊃未成年