行政行為

● 意義

行政庁が,法令に基づく公権力の行使として,国民に対して行う個別具体的処分(行政手続法2条2号参照)。
行政処分ともいう。
≠法規命令
≠行政指導
≠事実行為
≠通達
≠行政契約
学問上の概念。
人(@民法)でいうところの法律行為。
行政行為であれば,取消訴訟等の対象になる。

★「行政処分とは(東京都ごみ焼却場事件)」最判昭39・10・29
「行政庁の処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為により直接国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

形式的行政処分
   :本来的には行政処分ではないが,抗告訴訟を認めるために行政処分としたもの
   法定のものと法定外のものがある


▲ 要件

△法適合性
△相手方への到達(最判昭29・8・24)
   =意思表示の一般理論


◆ 効果

拘束力(規律力)
   ≒民法上の「契約」の効力(法的拘束力)
   根拠はないが,当然のこと


公定力
   :違法であっても一応は認められる行政行為の効力
   ・・・たとえ違法でも,重大かつ明白に当然無効でない限りは,効力がある(最判昭30・12・26)
   目的:行政の安定性確保
      違法かどうか怪しい場合に,従うもの・従わないものに別れれば・・・
      ↑↑
   根拠:取消訴訟の排他的管轄


執行力
   :行政庁が行政行為の内容を,裁判所の強制執行によらず,自力で執行できる
   →行政上の強制執行
   個別法(行政代執行法等)が必要


不可争力
   :争訟定期期間(取消訴訟の6か月等)を徒過すれば,行為の効力を争えない
   形式的確定力ともいう

時効 不可争力を見て想起される時効は,趣旨である「権利の上に眠る・・・」などを見れば解るように,相当の長期間を想定している(別に“短期”消滅時効があることもその証左である)。これに対して,不可争力は(時効のように数十年でもなく,短期消滅時効のように数年でもなく)数か月であることに特徴がある。その趣旨は,いうまでもなく行政法関係の早期安定にある。「実際問題としては非常に大きな特権」*1である。


不可変更力
   :行政庁は,自らした処分を変更することができない
      ≒禁反言原則
   実質的確定力ともいう
   訴願の裁決=争訟の裁判 ∴処分庁は自らこれを取り消すことはできない(最判昭29・1・21)


■ 行政行為の瑕疵

行政行為に瑕疵があれば,取消訴訟による必要がある(取消訴訟の排他的管轄)。が,明らかにおかしい! という場合にもわざわざ取消訴訟によらなければならないのだろうか。ここでは,取り消しうべき行政行為と,無効の行政行為の区別が問題となる。


□前提:行政行為の無効・取消・撤回
   ○行政行為の無効
      :行政行為の効力をそもそも存在しないものとすること
   ○行政行為の取消
      :行政行為の成立に瑕疵があるため,過去にさかのぼってその効力を失わせること
      私人の争訟を待って取り消される場合=争訟取消
      処分庁が自主的に取り消す場合=職権取消
   ○行政行為の撤回
      :行政行為の成立後に,新たな事情が発生したために,将来に向かってその効力を失わせること


?区別の基準
   違法が重大かつ明白(最大判昭31・7・18)
      「重大」:処分の根幹にかかわる重要な要件違反
      「明白」:誰の目から見ても明らか
   (第三者がいなければ)違法が重大(最判昭48・4・26)


?(職権)取消・撤回のマナー
   処分→新たな法律関係の創造 ∴顕著な不正がなければ取り消せない(最判昭28・9・4)
   特段の公益上の必要がある場合に限られる(最判昭33・9・9)
      ↑取り消す取り消さないを比較衡量(最判昭43・11・7)
      公益上の必要が高ければ明文規定がなくても撤回可(最判昭63・6・17)
   取消→不当利得返還請求 ←だめ(最判平6・2・8)
   ・取消権者
      処分庁+上級庁
   ・撤回権者
      処分庁

*1:134頁

行政法〈1〉行政法総論

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