相続の効力

◎原則
   相続人は,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条本文)
×例外
   ただし,一身に専属したものはこの限りでない(896条但書)
   ・一身専属権
      ex.民法111条・552条・653条
      ×例外?→生命侵害に対する被相続人の慰謝料請求権

残念残念 慰謝料とは,慰み代であり,一身専属権であると解するのが妥当である。したがって,「慰謝料よこせ」といわない限り,一身専属権は,一般性のある債権に転換しない(昔の判例)。が,わざわざ言葉に出さなくては(意思表示をしなくては),一般債権に転換しないというのも,これまた面倒な話である。そこで,慰謝料請求権は,一身専属権でありながら,例外的に当然承継されるようになった(今の判例)。が,711条でいい,という学説もある。
  • 相続財産の範囲

・占有権
   当然承継


・借地借家権
   借地借家法36条


公営住宅使用権
   当然承継すると解する余地はない
      ∵公営住宅法の趣旨


・損害賠償請求権
   ≒慰謝料請求権(前出)


・保証債務
   個人的色彩が強い∴特段の事情がない限り承継されない


無権代理
   @無権代理人が本人を相続
      追認の拒絶は信義則上許されない
         本人が追認拒絶をした場合は,許されないことはない

★「本人の相続,無権代理人の相続」最判平10・7・17民法百選Ⅰ37
<事実>
本件各物件の所有者であるAは昭和58年当時,すでに意思能力を喪失していた。その長男であるBは,Aを無権代理して各物件に根抵当権を設定。その後の昭和61年,Bが死亡し,妻Dと子X=原告が限定承認。ついで,昭和62年にAに禁治産宣言,Dが後見人に就任。Dは,Aの法定代理人として,Yに根抵当権抹消登記手続を求める本訴を提訴。ところが,訴訟係属中の昭和63年にAが死亡,Xが各物件及び訴訟を承継した。
1審はXの請求を棄却。Xは無権代理人を相続したあとに本人を相続したため,信義則上本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位が生じるから,追認拒絶をする余地がない,という理由による。
<判断>
破棄自判。
無権代理人がした行為は,本人が追認をしなければ本人に対して効力を生ぜず(民法113条1項),追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し,追認拒絶のあとは本人であっても追認によって無権代理行為を有効にすることができず,この追認拒絶のあとに無権代理人が本人を相続したとしても,この追認拒絶の効果になんら影響を及ぼすものではない。
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合,その後に無権代理人が本人を相続したとしても,無権代理行為が有効になるものではない。


・生命保険
   =死亡時に初めて発生する財産権∴相続の対象とはならない


・恩給・年金
   逸失利益→相続可能


・ゴルフ会員権
   個性を重んじるゴルフ倶楽部の場合は,一身専属権