共同不法行為
- ●意義
共同して不法行為が行われ,損害発生者が不明な場合に,共同行為者らに損害全額の賠償を連帯して負わせる仕組み(民法719条)。
幇助・教唆(2項)
○狭義の共同不法行為
:共同者全員がいずれも損害の発生に関与している場合(719条1項前)
○加害者不明の共同不法行為
:共同者中,誰が加害者である皮からない場合(719条1項後)
- ♪趣旨
♪被害者救済
→加害者の不公平感解消が課題
- ▲要件
1 狭義の共同不法行為
1) △各人の行為が独立して不法行為の要件を備えている
ア 各人の行為の独立性
イ 各人の行為の不法行為要件充足性
因果関係はきつい・・・
→中間項設定?
→加害者不明型に読み替え?
2) △各行為者に共同関係がある
主観?客観?
★「大阪,公害の街」大阪地判平7・7・5百選Ⅱ83
<事実>
大阪市西淀川区に住むXら原告は,工場の排煙・国道の排ガス・高速道路排ガスなどによって健康上の被害を被ったとして道路管理者の国・阪神高速道路公団・工場10社を相手取り損害賠償・差し止めを請求。
<判断>
1 719条1項前段
共同行為の関連性は,客観的関連性でよい。この場合,主観的共同性の度合いによって,損害の賠償額が変更する。強い共同関係にあれば,全額について連帯責任を負い,弱い共同関係にあれば,責任の分割を認めるのが相当である。
2 719条1項後段
共同行為者において,結果に因果関係がないことが立証されれば責任を免除し,結果にかかわっていたとしても,寄与度が低い場合には,減責を認めるのが相当である。
3 719条類推適用
本件のような都市型複合大気汚染のケースのように,
①加害者の特定・行為の寄与度を特定することが極めて困難で
②これを要求すると被害者が損害賠償を求めることができない虞があり
③寄与の程度によって損害を合理的に査定できる場合
には,上記のような特定が充分でなくとも,719条を類推適用して,損害賠償の請求を認めるのが相当である。
2 加害者不明の共同不法行為
1) △共同行為者
2) △共同行為者にいずれかによる損害惹起
3) △各共同行為者に因果関係以外の不法行為要件が満たされている
- ◆効果
1 ◇共同不法行為者の損害賠償責任
1) 各自連帯
不真正連帯債務(判例・通説)
2) 賠償範囲
加害者の公平のため,連帯部分の制限傾向
2 ◇加害者間の求償権
∵誰も率先して損害賠償しなくなる