取締役&取締役会
商法2編4章3節2款=254〜272条
- ● 取締役
:株主総会によって選任され(254条1項),取締役会を構成する者。
株主に限ることはできない(254条2項)
×例外→譲渡制限会社
会社とは委任関係(254条3項→民法651条)
→いつでも辞任できる
員数は3人以上(255条)
×例外→取締役会を設置しない株式会社
任期は原則2年(256条)
×例外→譲渡制限会社
- ● 取締役会
:会社の業務の執行を決し,代表取締役を監督をする株式会社の機関(260条1項)。
The board of directors.
株主総会に次ぐ会社の高等意思決定機関
≠最高
有機的な取締役の関係が特徴
★「取締役の欠席した取締役会」最判昭44・12・2百選42
<判断>
取締役の一部の者に招集通知がなされず,招集通知に瑕疵があるときは,特段の事情のない限り,取締役会の決議は無効。だが,欠席した取締役が出席しても尚決議の結果に影響がないという特段の事情があれば,決議は有効になる。
各取締役が招集するのが原則(259条1項)
×例外→たくさん
過半数の取締役の出席による過半数の賛成(260条の2第1項)
特別利害関係人はだめ(260条の2第2項)
⊃代表取締役解任決議における代表取締役本人
¬⊃代表取締役選任決議における代表取締役本人
★「特別利害関係」最判昭44・3・28百選40
<判断>
代表取締役の解任に関する取締役会の決議においては,当該代表取締役は,特別の利害関係を有するものに当たる。けだし,代表取締役には業務の執行・会社の代表の権限があり(261条3項→78条),大きな影響力があるのであって,本人の意思に反してこれを代表取締役の地位から排除することの当否が論ぜられる場合,当該代表取締役に対し,一切の私心を去って,会社に対して負担する忠実義務に従い,公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく,かえって,自己個人の利益を図って行動することすらありえるからである。それゆえ,取締役会決議の公正のために,当該取締役の議決権の行使を禁止するのが相当なのである。
● 代表取締役
:株式会社において,業務を執行し,会社を代表する取締役(260条3項1号)。
○3 左ニ掲グル取締役ハ会社ノ業務ヲ執行ス
一 代表取締役
取締役会決議によって選任される(261条1項)
→要登記(188条2項8号)
- ?とすれば代表取締役は取締役会の並列機関か
- 条文の文言上,そう見るのが適当だし,そもそも招集がなければ実存しない取締役会に,業務の執行権が与えられていると見るのも困難である。が,代表取締役といえども,取締役会の構成員であり,まったく以って別個の機関と解するのもどうだろうか。法が,取締役会による業務執行の困難さを考慮して,便宜上,代表取締役に,取締役会が有する業務執行権を派生的に付与したとも考えることができるだろう。本質的に,取締役会に業務執行権があると見るかどうかが分水嶺となる。
- ■ 権限
包括的な権限がある(261条3項→78条2項→民法54条)
□代表権
善意の第三者には制限は対抗できない
□表見代表取締役
●意義
平取締役なのに代表権があるような名称を使用した者がいる場合に,
取引の相手方が,会社に効力を主張できる制度(262条)
▲要件
△①外観の表示
△②会社の帰責性
△③第三者の善意
要無過失
∵本規定は第三者の正当な信頼を保護するもの
12条は? 12条後段によれば,登記後は,第三者の悪意が擬制されると考えるのが素直である。つまり,会社において誰が代表取締役かということは,登記さえされれば,会社は,第三者に対しては対抗できることになり,反射的に,誰が代表取締役でないかということも対抗できることになりそうである。そうすると,平取締役が代表的行為をしたからといって,第三者には,善意ということはありえないことになる。ここで,262条と12条の関係が問題となるが,262条は商法ではなく,会社法(特別法)として考えるのが素直であろう。
・類推適用
→従業員に
□有効な決議に基づかない行為
前提:一般的規定はない
→解釈で決する
@合併・営業譲渡
=本来は株主総会決議事項
↑瑕疵は重大
@株主総会招集
=本来は取締役会の決議事項
↑瑕疵は重大でもない
@新株発行・社債発行
=本来は取締役会の決議事項
↑瑕疵は重大でもない
+取引相手の第三者がいる
@個別取引
★「重要な財産処分(260条2項1号)の場合」最判平6・1・20百選41
<事実>
X株式会社の代表取締役だったAは,取締役会に無断でX社保有のB社株を約8千万円でYに譲渡。ところで,X社は創業者A.vs.代表取締役Cとの間で内紛が生じていたため,AとYの取引のあとで,Cは本件取引の無効を主張。原審は本件取引を「価格的には相当だが,重要ではない」とした。
<判断>
破棄差戻し。
重要な財産の処分にあたるかどうかは,具体的事情を総合的に考慮して決すべきである。
1 当該財産の価格
2 その会社の総資産に占める割合
3 当該財産の保有目的
4 処分行為の態様
5 会社における従来の取り扱い
<整理>
本件の場合,仮に内紛がなければCは無効を主張しなかったのではないか。
★「その行為の効力」最判昭40・9・22百選43
<判断>
取引の効力は,内部的意思決定を欠くにとどまるから,原則として有効であるが,ただ,相手方が決議を経ていないことを知っていたか,知りえた場合は無効である。
<整理>
民法93条但書類推適用。心裡=取締役会。権限濫用↓の場合も。
□権限濫用
民法93条但書類推適用
■ 取締役と会社
□一般的義務
会社とは委任(+準委任)関係(254条3項)
→善管注意義務(委任の本旨,民法644条)
+忠実義務(254条の3)
→いつでも辞任できる(民法651条)
- □競業避止義務
●意義
取締役の地位にかんがみ,競業行為につきあらかじめ取締役会の承認を必要とする制度
♪趣旨
♪会社の利益保護
を図りつつ
♪取締役の行動の自由確保
親子会社 ある取締役がA会社の取締役であると同時に,A会社の子会社Bの取締役の場合もありうる。そんな時,同じように取締役会の承認を必要とするのもおかしな話ではある。結合企業法制として欠点のある商法の問題が表れる。
▲要件
△取締役が
⊃事実上の取締役?
★「パンまみれ」東京地判昭56・3・26百選47
<事実>
原告X(山崎製パン)は創業以来,Yによるワンマン経営が行われていた。そんなYは,千葉県でパン製造業を営むA会社の株式のほとんどを取得。これにより,YはA会社の代表取締役でも取締役でもないが,経営について帝王として君臨するに至った。さらに,B会社を設立し,X会社が事前に市場調査をしていたのにもかかわらず,その市場に参入。たまらなくなったXは,Yに対し,競業避止義務・善管注意義務・忠実義務違反に基づく損害賠償請求か,Yが所有する競業会社の株式の引渡等を求めて訴え提起。
<判断>
YがA会社の事実上の主宰者として,これを経営してきたことは,第三者であるA・B会社のためにX会社の営業の部類に属する取引をしてきたことにほかならず,競業避止義務に違反し,また善管注意義務・忠実義務に違反する。そして,委任義務にも違反するが,委任義務に基づくYのあるべき姿とは,取得した会社の株式を,X会社に帰属させることであった。したがって,X会社の救済方法としては,Yが所有する株式の移転がもっとも適切である。
△自己または第三者のために
取引の経済的効果の帰属先をいう
△会社の営業の部類に属する取引
↑にあたらない取引には善管注意義務・忠実義務違反を問いうる
△取締役会の承認がない
◆効果
◇介入権発生(264条3項)
債権的効力(最判昭24・6・4百選48)
∵第三者の権利保護
◇損害賠償責任発生(266条1項5号)
損害額の推定(266条4項本)
- □自己取引(利益相反取引)
●意義
取締役が自己を当事者等として,会社とする取引に取締役会の承認を必要とする制度(265条1項)
♪趣旨
♪会社の利益保護
を図りつつ
♪取締役の行動の自由確保
=手続規制
∴取引禁止にはしない
自己取引と利益相反取引の意義の広狭 会社にとって,取締役の自己取引が一概に利益に反するようならば,自己取引を一切禁止にしてしまったほうが手っ取り早い。しかし,そうしていないのは一概に自己取引が利益相反取引とはならないからにほかならない。したがって,法は,とりあえず(会社の利益に反するかどうかは一見わからないから),自己取引を取締役会の承認にかからしめることとし,一般・抽象的な規制を課した。これを裏返せば,自己取引の内容に着目して取締役会の承認の有無を決するのは,法の趣旨を潜脱することとして許されなくなる。
▲要件
△自己取引
⊃直接取引+間接取引
◆効果
◇無効
=相対的無効
∵第三者保護
◇損害賠償責任発生(266条1項5号)
⊃当該取締役+会社代表取締役+決議賛成取締役
無過失責任(266条1項4号・2項)
↑責任免除特則あり(266条6項)
@金員貸付の場合
未弁済額の賠償責任
無過失責任(266条1項3号・2項)
↑責任免除特則なし
→免責には総株主の同意が必要(266条5項)
- □取締役報酬
:職務執行の対価
定款か株主総会決議による決定が必要(269条)
∵お手盛り防止
総額決定→配分はお任せ=OK
⊃退職金
★「退職金の決定」最判昭39・12・11百選52
退職金は取締役報酬に含まれる。そうすると,この金額の決定を無条件に取締役会に一任することはだめだが,株主総会により一定のフレームが与えられれば良い。そして,このフレームが株主にとって容易に知りえ,また常識的な金額であることを要する。
¬⊃ボーナス
∵:会社の利益分配←株主総会決議による
- □責任(266条)
・違法配当(1項1号)
290条1項・293条の5第3項違反
本来は不当利得返還によるべきだが,面倒で現実的でない
→取締役に無過失責任を負わせた
※無過失責任=過失を要件としない責任
悪意の株主には求償できる(266条の2)
・利益供与(1項2号)
294条の2違反
本来は利益返還を請求すべきだが,返してくれるかどうかわからない
→取締役に無過失責任を負わせた
・自己取引(1項4号)
265条1項による責任
取締役会の承認を得ない場合は266条1項5号の責任を問いうる
が,得た場合でも損害が発生しうる
→取締役に無過失責任を負わせた
・4号の特則(1項3号)
・一般責任(1項5号)
これが原則
会社と取締役の委任・準委任契約上の債務不履行(民法415条)責任
①本旨に則った履行がない
②帰責事由
過失=善管注意義務違反
職務・権限・義務・責任の4つをすべて考慮
∵回避可能性判断
※経営判断原則
a 合理的な情報に基づいて判断したこと
b 判断の対象に利害関係のないこと
c 判断内容が著しく不当でないこと
③損害発生
④因果関係
=過失責任
法令⊃遵守すべきすべての規定
☆他の取締役の責任
賛成取締役=行為をしたものとみなす(2項)
異議を留めない取締役=決議に賛成したものとみなす(3項)
■ 取締役と株主
□代表訴訟
株主が会社の取締役に対する責任追及を代位
□違法行為の差止
■ 取締役と第三者
- □266条の3の責任
●意義
:取締役の任務懈怠による第三者に対する損害賠償責任
=法定責任説(通説・判例)≠不法行為説
∵①本来的には会社が負うべき責任である
∵②巨大な権限を持つ取締役と,第三者の衡平を図る
★「本条の法意」最判昭44・11・26百選58
法は,株式会社の重要な地位と,その機関たる取締役の職務への依存にかんがみ,第三者保護の立場から,取締役の悪意・重過失による善管注意・忠実義務違反によって,第三者に損害が生じたときは,任務懈怠と損害に間接・直接問わず因果関係がある限り,損害賠償責任を規定したのである。
このような責任は一般不法行為規定によって追及することもできるが,第三者としては,任務懈怠についての悪意・重過失さえ立証すれば,自己に対する故意・過失を主張・立証しなくとも損害賠償を求めることができる。
代表取締役が,他の代表取締役に業務をまかせっきりで,任務懈怠を看過した場合も,任務懈怠である。
▲要件
△取締役の任務懈怠
=取締役の任務に関する悪意・重過失
≠第三者に対する
→結果的に不法行為責任に比べて要件軽減
一般的不法行為と競合請求可
・取締役
⊃決議に賛成した取締役(266条の3第3項→266条2項3項)
⊃監視義務違反の取締役
⊃取締役会に上程されなかった事項に関する監視義務違反(最判昭48・5・22百選59)
⊃名目的取締役
:取締役だが職務執行をしなくていいといわれた取締役
⊃表見取締役?
:取締役だが適法に選任されていない者
⊃退任登記未了取締役?
△第三者の損害発生
第三者⊃株主?
△因果関係
◆効果
◇損害賠償
範囲=両損害外包含説(通説・判例)