自然的関連性

  • ●意義

証拠と,証明しようとする事実との論理的関連性。
科学的捜査等において問題になる。
自白法則,伝聞法則などは法律的関連性。
関連性がなければ,証拠足り得ない。
  =証拠能力は証明力の延長線上にある


  • 具体例

・前科による事実認定

★「またかよと思わせたい」最決昭41・11・22百選64
<事実>
本件は被告人が生活費のため,社会福祉のために寄付を募っているように見せかけて金銭を集めた詐欺の事案である。1審は被告人の故意を認定するために,証拠として被告人が以前犯した同種詐欺事件の調書判決を採用。控訴審も「本件行為も(同種詐欺事件の)態様に照らし,詐欺罪を構成するものであることの認識があったと思われる」とした。弁護人は,「前科は量刑の根拠等にはなるとしても,犯罪行為の成立の根拠にはならない」とした大審院判例違反を根拠に上告。
<判断>
犯罪の客観的要素が他の証拠によって認められる本件事案の下において,被告人の詐欺の故意のごとき犯罪の主観的要素を,被告人の同種前科の内容によって認定した原判決に所論の違法は認められない。
<整理>
本件のような①主観的要素のほか,②構成要件としての前科・常習性等を証明する場合には,前科等に関する証拠が許容される。なぜなら,前科を証拠として禁止する理由は,不当な予断・偏見の排除(による事実認定誤認の防止)だが,逆に,事実認定に資する前科であれば禁止する理由はないからである。


ポリグラフ検査
  cf.ポリグラフ検査

★「まことくん」最決昭43・2・8百選72
<事実>
被告人は取り調べに対していったんは自白したが,その後否認。このため,捜査官は被告人と被害者の希望により両名に対しポリグラフ検査(被告人はその当時つわりがひどく,臥せたままで,検査室に担ぎ込まれ,検査中にも吐き気に襲われるという有様だった)を実施し,検査者による回答書が作成された。この回答書には,被告人の主張は虚偽で,被害者の供述は信頼できる旨の記載があった。
その後,公判においても対立状態が続いたことから,検察官は上記回答書を321条4項の書面とした証拠取調べの請求をしたところ,被告人側も条件付ながらこれに同意。そして,判決は被告人有罪。控訴審で弁護人は「ポリグラフ検査の結果は証拠能力を有しない」と主張したが,「検査結果の証拠採用については,被告人も同意したし,かつ,書面は検査に必要な技術と経験を有する適格者が,信頼性のある器具によって,忠実に作成したものと認められる」とした(このように判示する前にポリグラフ検査結果がなくとも被告人の有罪は認定できるとした)。弁護人は「ポリグラフ検査結果に証拠能力を認めることは危険極まりない」と上告。
<判断>
ポリグラフの検査結果を用いることは慎重な考慮を要するが,原審が,その作成されたときの状況等を考慮し,証拠能力を肯定したのは正当である)


・筆跡鑑定
  cf.筆跡に関する研究
  cf.筆跡鑑定のご案内

★「なんちゃって鑑定士」最決昭41・2・21百選75
<事実>
本件は脅迫事件で,脅迫に用いられた葉書の筆跡鑑定が問題になった。この筆跡鑑定には5人の鑑定人によって別々に行われたが,そのうち1人のA鑑定士は理論物理学者で,他の4鑑定士のような「伝統的筆跡鑑定」は「近代統計学」からみて信用度が薄いという結論を示した。弁護人もこの言を採り,「4鑑定士の鑑定は主観と勘を頼りにした客観的・科学性のないものである」と上告。
<判断>
確かにこれらの鑑定は主観と勘によるものだが,だからといって非科学的・不合理であるとはいえない。
それに,本件では4鑑定士は筆跡鑑定の経験が豊富で,しかもそのうち3人は被告人側の請求につき選任され,これになんらの異議申立てもなされず,また証拠とすることにも同意がある。これに対し,A鑑定士はこれまで筆跡鑑定をした経験がまったくなく,本件をきっかけにしてはじめてその研究に取りかかったものであり,その鑑定も,他の4鑑定士の鑑定の証明力を否定するにとどまり,自ら葉書の筆跡と被告人の筆跡との同一性につき判断を示しているものではない。
したがって,原判決がA鑑定を採用しなかったことは,なんら採証法則に違反するものではない。


・声紋鑑定
  cf.声紋による個人識別
  cf.鈴木松美

★「声紋鑑定」東京高判昭55・2・1百選74
声紋鑑定に証拠能力を認めることは慎重でなければならないが,陪審制を採らず,個別具体的な判断に親しむわが国の制度のものでは,一概にその証拠能力を否定するのも相当でない。適格者が,信頼できる器具によって,忠実な報告が行われた場合,証明力は別として,証拠能力を認めることは妨げない。


・DNA鑑定

★「DNA鑑定」最決平12・7・17百選73
「DNA型判定方法としてのMCT118法は科学理論的,経験的な根拠を有しており,よりすぐれた方法が今後開発される余地はあるとしても,その手段・方法は一定の信頼性のある妥当なものと認められるから,専門的知識と経験のある熟達した技官によって行われた本件DNA型鑑定の結果を証拠として用いることは許される」とした原審を支持した。


・犬の臭気選別

★「警察犬による臭気選別」最決昭62・3・3百選76
記録によると,臭気選別は専門的な知識と経験を有する指導手が,臭気選別能力が優れ,選別時において体調等も良好でその能力がよく保持されている警察犬を使用して実施したものであるとともに,臭気の採取,保管の過程や臭気選別の方法に不適切な点のないことが認められるから,本件各臭気選別の結果を有罪認定の用に供しうるとした原判断は正当である。