上訴

  • ●意義

未確定の裁判に対し,上級裁判所の審判による是正を求める不服申し立て(刑事訴訟法3編)。
控訴・上告・抗告がある。


  • ♪趣旨

♪①原判決の誤り是正による真実発見
♪②法令解釈の統一
♪③被告人の具体的救済


  • ▲要件

△①上訴権者であること
  =裁判を受けた者=被告人+検察官(351条1項)
  ×例外→352〜356条
△②上訴の利益があること
  @検察官
    問題とならない
      →被告人のためにも上訴できる
      ∵公益の代表者
  @被告人
    問題となる
      →無罪判決には上訴できない(最決昭37・9・18)
      ∵上訴権濫用
△③上訴期間を徒過していないこと
  裁判が告知された日から(358条)
    控訴・上告は14日以内(373条・414条)
    即時抗告は3日以内(422条)
    特別抗告は5日以内(433条2項)
△④上訴の放棄・取り下げをしていないこと(361条)
  上訴の放棄・取り下げはできる(359条)
    が,360条の2・360条の3

★「死刑のショックで上訴取り下げ」最決平7・6・28重判平7刑訴8
<事実>
申立人は第1審の死刑判決により「世界で1番強い人」妄想にうなされるようになり,弁護人の説得にも応じず,控訴取り下げ。控訴審はこの取り下げを有効とし,訴訟終了の決定。これに弁護人が異議申立て。原審は異議申立て棄却。弁護人特別抗告。
<判断>
死刑判決に対する控訴取り下げは重大な効果を伴うから,死刑判決のショックと公判の重圧から逃れるためになされた上訴取り下げは無効である。けだし,上訴取り下げには自己の権利を守る能力が必要であるが(最決昭29・7・30),本件の場合,被告人はこれを著しく制限されていたからである。

  • ◆効果

◇①裁判の確定・執行の停止
◇②事件の移審

主文複数の場合,上訴不可分の原則なし(357条参照)
  • 控訴

・●意義
  第一審判決に対する高等裁判所への上訴(3編2章)。
  事後審制を採る(376条・392条1項参照)が,破棄自判の場合は続審制的。

事後審は原判決の当否を判断するものだから,訴因が審判対象となるわけではない。が,破棄差戻しをするのであれば原判決を「否」とすればよいが,破棄自判の場合には「否。けだし〜」とする必要がある。「けだし〜」を書くには当否だけを判断しては足りない。だから,原審の資料に新たな証拠を加えて判断する必要がある。これが続審制


・控訴理由
  ①絶対的控訴理由7つ
    377条1号2号3号
    378条1号2号3号4号
  ②手続違反(379条)
    ⊃審理不尽,経験則違反,論理則違反
      ∴相対的控訴理由といわれる
  ③法令の適用誤り(380条)
  ④量刑不当(381条)
  ⑤事実誤認(382条)
  ⑥再審事由その他(383条)


・▼手続
▽控訴申立
  14日以内に(373条)
  控訴申立書を第1審裁判所に差し出す(374条)
控訴趣意書提出
  控訴趣意書を控訴裁判所に差し出す(376条)
    控訴裁判所が21日以上の期日を指定(規236条)
▽控訴趣意書の調査
  裁判所は必ず調査する必要がある(392条1項)
    調査:フリースタイル→自宅でしても良い
  書いていないことについても限定的に調査できる(392条2項)
    ∵真実発見=誤り訂正
    権限であるが義務ではない

★「職権調査の限界」最大決昭46・3・24
行刑訴法は当事者主義を採り,控訴審の性格を事後審たるべきものとしている。そして,控訴審は当事者の申し立てた控訴趣意を中心としてするのが建前なのだから,職権調査はあくまで補充的なものとして理解されなければならない。
本件の有罪とされた部分と無罪とされた部分とは牽連判ないし包括一罪を構成するが,それぞれ一個の犯罪構成要件を充足しうるものであり,訴因としても独立しうるものである。そして,無罪とされた部分については被告人からの不服を申し立てる利益はなく,検察官からの控訴申立もないのだから攻防の対象からはずされたものと見ることができる。これに対して控訴審が職権によって調査を加え有罪の自判をすることは,被告人控訴だけの場合第一審判決の刑より重い刑を言い渡されないことが被告人に保障されているとはいっても,被告人に対し不意打ちを与えることであるから,違法なものといわなければならない。

  必要であれば↓
▽事実の取調べ
  :新資料の取り調べ,旧証拠の調べ直し
  ・事実の範囲
    原判決以前の事実
      ∵事後審
  ・資料の範囲


  • 上告

・●意義
  判決に対する最高裁判所への上訴(3編3章)。
  上告審も事後審(414条)。


・上告理由
  ①憲法違反(405条1号)
  ②判例違反(405条2号3号)
  ③上告受理(406条)
  ④結果的上告(職権破棄。411条)


  • 抗告

・●意義
  決定・命令に対する不服申し立て(3編4章)。
  ・一般抗告
    即時抗告
      特に規定がある場合
      3日以内に(422条)
    通常抗告
      裁判所がした決定に対して
      ×例外5つ
  ・特別抗告
    最高裁判所への特例的不服申し立て(433条1項)
    5日以内に(433条2項)
  ・準抗告
    429条1項1号2号3号4号5号
    検察官の処分に対する準抗告(430条1項2項)