地方自治

  • ●意義

地域における政治・行政を,その地域の住民の意思にもとづいて,国から独立した地方公共団体が自主的に行う仕組み(92〜95条,地方自治法等)。

  • 概要

多くの国々は地方自治の内容を法律で定める。これに対し,わが憲法は「地方自治」の章を設けてこれを規定している。この性質について考えるに,地方公共団体の前国家的権利を保障したものと解すると,主権の単一・不可分性という近代原則にそぐわず,逆に,国家が統治権により敢えて認めたものと解すると,わざわざ憲法が「地方自治の本旨」を定めた趣旨を無視する結果になる。したがって,この規定は,これらの考えの折衷形態として,地方自治の制度上コアとなる部分のみを保障し,法律によってもこれを侵すことができないものとした,いわゆる制度的保障であると解する。
では,「地方自治の本旨」の具体的内容は何か。この点,地方自治の利点は,住民の意思にもとづいて政治・行政が行われること(93条,民主主義的要素)と,それが国から独立した団体により行われることにより,中央集権化の解消が図られること(94条,自由主義的要素)にある。これらのため,「地方自治の本旨」は住民自治団体自治を意味する。

普通地方公共団体(地自法1条の3第2項)
  都道府県
  市町村
特別地方公共団体(3項)
  特別区
  地方公共団体の組合
  財産区
  地方開発事業団

「道州制とナショナル・ミニマム」藤田宙靖
○ 問題を考える出発点として、まず、「道州」は日本国憲法(92条以下)のいう「地方公共団体」か、ということを検討しておく必要がある。なぜならば、これまでのわが国の地方分権の推進は、憲法の定める地方自治を現実化する、という大前提の下に行われてきたからであり、且つ又、憲法地方自治の担い手として明示している受け皿は、もっぱら「地方公共団体」であるからである。
* この問題に関しては、何よりも、特別地方公共団体の一種である特別区憲法でいう「地方公共団体」であることを否定した最高裁判決(最判昭和38年3月27日刑集17巻2号121頁)が参照されなければならない。すなわち同判決は、次のように述べている。
「(憲法93条2項にいう地方公共団体たるためには)単に法律で地方公共団体として取扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し、沿革的に見ても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とするものというべきである。」
* この基準を当てはめると、「道州」は、これを仮に地方公共団体と呼ぶとしても、普通地方公共団体憲法のいう「地方公共団体」)ではなく、特別地方公共団体の一種に過ぎないということにもなりそうである。仮にそうであるとすると、一方では、その自治のあり方に対し、必ずしも普通地方公共団体と同レヴェルでの憲法上の保障を受けない反面、他方では、その行いうる事務の内容について、「地方公共団体」であるが故の制約も、都道府県や市町村の場合と同じようには受けない、ということになる。

1)組織
地方公共団体には議会の設置,およびその長などの選挙が必要である(93条)。
  ・地方議会
  ・地方公共団体の長
2)権能
地方公共団体が行う事務は,自治事務法定受託事務の2種類である。
  ・自治事務(地自法2条8項)
    :法定受託事務以外のもの
  ・法定受託事務(9項)
    1号法定受託事務
      本来は国がやるものだけど→都道府県・市町村・特別区
    2号法定受託事務
      本来は都道府県がやるものだけど→市町村・特別区

  • 条例

条例とは,地方公共団体がその自治権にもとづいて制定する自主法である(94条)。
自主法とは国家法に対する概念であり,①地方公共団体はその事務に関する事項しか規定できないが,②その範囲内では国家法とは無関係に独自の規定を設けることができる,ことを意味する。そして,この要件と「法律の範囲内」が条例制定権の範囲となる。
1)29条2項との関係

?財産権を条例で規制することができるか
できる。条例は住民の代表機関である議会の議決により成立する民主的立法であり,実質的には法律に準じたものである。また,地方独自の事情に対応するには,法律ではなく条例によらなければならない実際的理由もある。

2)31条,73条6号との関係
地方自治法14条3項が積極的に承認した。
3)84条との関係
地方税法3条が積極的に承認した。
4)上乗せ条例横だし条例

?これらの条例は「法律の範囲内」か
対象となる法令による。法令と条文の趣旨,目的,内容,効果を比較し,矛盾抵触がない場合にはこれらの条例は「法律の範囲内」となる。具体的には,法令の趣旨が全国一律の規制を目指していると解される場合には,これら条例は法令の範囲外であり,法令の趣旨が地方の独自色を加味した条例の上乗せ・横だしを認容していると解される場合は,「法律の範囲内」である。このように解することが,「地方自治の本旨」としての住民自治,団体自治に最も適う。単純に,法律が規制した範囲については,条例で規制することができないとする考えは妥当ではない。
  • cf.

論点[6 地方自治] | 日本国憲法の誕生
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hmminami/note-tihoujiti.htm