訴え提起
● 意義
裁判所に対して審理・判決を申し立てること(民事訴訟法2−1)。
- 種類
・給付の訴え
現在の給付の訴え+将来の給付の訴え(135条)
請求認容判決には,既判力と執行力が生じる。
請求一部認容判決には,引換給付判決がある。
請求棄却判決には,既判力のみが生じる。
・確認の訴え
積極的確認の訴え+消極的確認の訴え
請求認容・請求棄却判決のどちらにも,既判力のみ生じる。
・形成の訴え
実体法上の形成の訴え+訴訟法上の形成の訴え
請求認容判決には,既判力と形成力が生じる。
請求規約判決には,既判力のみ生じる。
▼ 手続
▽訴状の提出(133条1項)
・必要的記載事項(133条2項)
1:当事者及び法定代理人
2:請求の趣旨及び原因
・準必要的記載事項(規53条)
▽裁判長の訴状審査(137条1項)
不備があれば補正を命ずる
補正がされなければ命令で訴状を却下する(2項)
↑即時公告ができる(3項))
▽被告への訴状送達(138条1項)
送達は裁判所の書記官がする(98条。職権送達主義)
基本は交付送達(手渡し)
▽口頭弁論期日の指定(139条)
訴え提起から30日以内(規60条)
◆ 効果
実体法
◇時効中断(147条)
→cf.時効学説
◎原則:訴訟物の範囲で
一部請求の場合も,その範囲内で。
×例外:攻撃防御方法の場合でも
中断効は訴えの取下げ・却下により遡って消滅
訴訟法
- ◇訴訟係属
- ?いつ訴訟が継続するのか明文の規定がない。
- 被告に訴状が送達されたときと解すべきだろう。送達されてはじめて両当事者が確定し,裁判所の審理が可能になるからである。
→二重起訴の禁止(142条)
第142条 裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。
当事者,事件の対象が同一である場合
∵①被告の応訴の煩 ②訴訟不経済 ③矛盾判決の危険
・当事者
判決効は原則として両当事者間にのみ及ぶ(115条1項1号)
が,↓の場合も当事者は同一と見うる
①原告・被告の立場が逆転した場合
②判決効の及んでいる者の場合
→債権者代位訴訟等
・審判の対象
→訴訟物自体が同一の場合
↑問題なく二重起訴禁止に触れる
→権利関係の同一の場合
- ?同一債権の債務不存在確認訴訟と給付訴訟は二重起訴の禁止に触れるか
- 二重起訴禁止の趣旨は,矛盾判決の防止にあるが,債務不存在確認訴訟と給付訴訟といえども,それが同一債権を原因とするものであれば,仮にどちらも認容された場合,判決の矛盾を生じる。したがって,この場合でも二重起訴の禁止に触れる。
→一部請求と残部請求
- ?一部請求をしたあとの残部請求は二重起訴の禁止に触れるか
- 一部請求の範囲が明示された場合,矛盾判決が生じる危険性はないから,二重起訴の禁止には触れない。ただし,一部請求訴訟の継続中に,残部請求の訴訟の提起をすることは,一部請求訴訟の拡張が行われた場合,二重起訴禁止に触れる可能性がある。したがって,このような場合には残部請求訴訟を新たに提起するのではなく,一部請求訴訟の変更(143条)などによることが信義則上もとめられる。
抗弁として提出された場合は・・・
◎原則:二重起訴にあたらない
∵理由中の判断に既判力は生じない(114条1項)
×例外:相殺の抗弁?
∵理由中の判断に既判力が生じる(114条2項)
★「相殺の抗弁」最判平3・12・17百選45
<事実>
YとXの間には,YがXに対して売買代金の支払いを求めるα訴訟が継続していたが,今度はXがYに取引代金の支払いを求めるβ訴訟を提起。β訴訟ではXが一部勝訴したが,Yが控訴し,その中でα訴訟でYがXに訴求する債権を自働債権とする相殺の抗弁を提出。そのα訴訟ではYが勝訴し,Xが控訴したが,東京高裁はβ訴訟の併合を命令していたところ,Yの相殺の抗弁は併合審理中のものだった。この後,東京高裁は弁論を分離し,Yの総裁の抗弁を排除。
<判断>
重複起訴の禁止は矛盾判決の危険回避と無駄な訴訟の防止にあるが,相殺の抗弁は自働債権の存在・不存在に既判力があり,矛盾判決の危険があるから,142条の趣旨は,同一債権ついて重複して訴えが係属した場合のみならず,すでに係属中の別訴において訴訟物となっている債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出する場合にも妥当する。
・裁判所のとるべき措置
二重起訴について職権調査
二重起訴なら→後訴の却下
二重起訴でも→適宜対応すべき(弁論併合(152条1項)等)
二重起訴を看過して判決がなされたら・・・
先に出た判決と矛盾する判決は出せなくなる
その判決が抵触するなら・・・
再審の訴え(338条1項10号)