武力紛争法

戦争が違法となったため戦争法は理論上存在しえなくなったが,それでも戦争はなくならなかった。そこで,戦争による被害をできるだけ少なくするため,武力紛争法という名称の下に統制が行われるようになる。


■ 適用範囲

人道上の見地から,侵略国にも被害国にも適用される(無差別適用原則)。
紛争が国内的なものか国際的なものか,強度が強いかそうでもないかで適用する条約が異なる。
宣戦布告があろうとなかろうと適用がある。
適用が終わるのは戦争の終結時。
国家に対して適用されるのが基本だが,非国家主体への適用は論点。
さらにテロリズムが戦争にあたるか否かも論点。


■ 実体規定

  • 技術規制

軍事技術は日進月歩のため,具体的規制がなければ慣習・人道・公共良心等国際法原則に従って規制される(マルテンス条項。ハーグ陸戦条約前文)。
過度の障害と無用な苦痛を与える兵器の使用は禁止(対人地雷など)。
環境破壊兵器も使用禁止(枯葉剤など)。
大量破壊兵器も使用禁止(ABC兵器)。
核兵器自衛の極端な状況でなければ,一般的に違法。

  • 方法規制

原則は均衡性原則。
軍事目標と文民・民用物を区別しない無差別攻撃は禁止。
攻撃される側も人間の盾をおくことは禁止。人間の盾の志願者はこれに含まれない。
病院・原発・ダム・文化財などは攻撃禁止だが,攻撃される側も標識を設けてはっきりさせる必要がある。この標識の濫用は禁止。

  • 人的保護

傷病者・捕虜・文民・傭兵・ジャーナリストなどは保護を受ける。
ここでもテロリストとの関係が問題。
児童兵は相手が油断しやすく,教育も容易ということで,おとなによって戦争に駆り出されているが,子ども同士が殺し合いをするのは人道に反するということで,18歳未満の児童兵は禁止される(子供の権利条約選択議定書)。


■ 履行確保

政府は人道法を普及・教育する義務がある(ハーグ陸戦条約1条など)。
手段としての復仇も禁止されないわけではないが,均衡性要件を遵守する必要もある。
赤十字などの第三者機関の監視・抑制も有効。

民族紛争の激化により,安保理国際刑事裁判所を設立したが,それらは常設でなく,限定された役割しか果たせなかった。そこで,ICCが設立される。
属地主義・積極的属人主義。
二審制。
検察官の捜査開始は,締結国の付託・安保理の付託・検察官の職権捜査のいずれか。