国家責任
● 意義
国が国際法に違反したときに生じる責任。
基本的に,責任内容は違反した国際法に書いてあるが,ここではそれがない場合の一般的責任が問題。
これに関してILCの国際違法行為に対する国の責任に関する条文草案がある。
▲ 要件
国際違反行為は,国家行為のうちで国際法違反になるものをいう。
- △1:国家行為
( ..) | 行政 | 立法 | 司法 |
作為 | 違法な武力行使・国内での人権侵害など | 国際法違反の国内法定立 | 国際法の要求に反する不当判決 |
不作為 | 外国人の権利保護懈怠など | 国際法実施のための国内法不定立 | 裁判拒否(denial of justice) |
連邦国家の州の行為も国家行為。
上級機関の指示命令に反した下級国家機関の行為も国家行為。
権限踰越の行為も国家行為。
要するに外形を標準に判断。
したがって,私人の行為でも国家行為の外形があれば国家行為になる。
また,私人が事実上国家の指示に基づき,または国家の指揮命令下に行動した場合は国家行為。
反乱団体が新政府となった場合は,過去に反乱団体が行った行為は遡及的に国家行為になる。
領域主権の排他性ゆえ,属人的規制の実現可能性は低いので,領域国は領域主権の適正行使が要求される。したがって,外国人保護懈怠は義務違反であり,逆に,他国における自国民の違法行為には原則として責任を負わない。
- △2:?故意・過失(主観的要素)
個人責任の理論を国家に適用できるか。
ILC草案は明示の要件としていない。
- △3:?法益侵害
具体的な法益侵害(相互主義的義務違反)がなくても,抽象的に国際社会との全体関係において責任を考える(対世的義務違反)べきか否か。
ex.平和・人権・環境
ILC草案は明示の要件としていない。
- △4:違法性阻却事由の不存在
ILC草案・・・同意・不可抗力・避難・緊急状態・自衛・対抗措置。
自衛は国の基本権だから,そもそも違法ではないのではないか。対抗措置も同様。
◆ 効果
- ◇是正・救済
まず中止,再発防止の保証。
事後救済は原状回復が基本だが,困難であれば金銭賠償・精神的満足。
金銭賠償は結局のところ国民の税金でまかなわれるため,問題(一次大戦後のドイツなど)がある。経済制裁についても同様。
精神的満足には陳謝・名目的損害賠償・有責個人の処罰・再発防止の確約・違法宣言判決などがあるが,基本は謝罪(apology)。
遺憾の意(regret)は謝罪より程度の低い謝りかた。
- ◇責任追及
A国がB国に侵略したとしても,この侵略の被害国はB国であってC国ではないから,C国は責任追及できないように思える。しかし,平和・人権・環境が普遍的価値を有することにかんがみれば,一般利益侵害行為として,C国は責任の追及ができる。
判断権者
国際社会には先進国の国内社会のように裁判所の強制管轄権がないため,さまざまな場で議論・評価され,強制的措置の対象となる。そうすると,国の力が議論・結論にに影響する。
このため,国際法関与者としての非国家主体の役割が重要性を増大している。
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