条約

● 意義

国家または国際機関どうしが交わす成文の約束・合意。
http://homepage1.nifty.com/arai_kyo/intlaw/docs.htm
国際慣習法とならんで重要な国際法法源
協定・協約・規程・取極・憲章・宣言・議定書など呼び方はさまざまだが一緒。
共同声明は微妙。
国家間の条約にはウィーン条約法条約の適用がある。
日本では,国際法上の条約が国際約束と呼ばれ,国会の承認を必要とするものを国内法上条約*1といい,必要としないものを行政取極(行政協定)と呼んでいる(外交関係の処理。憲法72条2号)。
署名・批准により成立。

  • 国内法との関係

・個別的受容型
   議会が条約に国内法の効果を個別に付与する。
   イギリス。
   これがなければ法律は条約に優越。
・承認法受容型
   議会が条約を法律の形式で承認して,国内法的効力を付与する。
   ドイツ。
・自動的受容型
   公布により条約に国内法的効力が付与される。
   日本。
憲法・法律を理由に条約を履行しないことは国際法違反となる(条約法条約27条)。
一般に,条約それ自体は国家の権利義務を規律するものだから,国民への効力(自動執行性・直接適用可能性)は別問題。

  • 解釈

文脈,趣旨・目的により与えられる用語の通常の意味において誠実に行う(31条1項)。
文脈 ⊃ 関係合意+関係文書(2項)
事後の合意・慣行も考慮する(3項)。

?事後の合意・慣行も考慮にいれると,法解釈が時代によって異なる結果が生じえ,問題がある。
しかし,時代によって規範意識が変化するのは当然であるのに,その場合でも行為時を標準にすると法の実効性が失われる。発展的解釈は必要なのである。

★「発展的解釈(ナミビア事件)」ICJ1971・6・21勧告的意見
国連憲章や植民地独立付与宣言などの解釈にあっては,その後に生じた変化を考慮しなければならない。さらに,国際文書は,その解釈のときに広く行き渡っている法制度全体の枠内で解釈され,適用されなければならない。

  • 留保

条約の中の特定の条項の適用を排除・変更すること。
条約の趣旨・目的に反する留保は許されない(両立性原則。19条)。

  • 解釈宣言

条約の規定・文言・範囲などについて,自国の解釈を一方的に宣言すること。
事実上の留保であり,留保禁止条項の潜脱にもなってしまう。

  • 効力

拘束と誠実履行義務(合意は拘束する。26条)。
条約が一般国際法規範の体現であれば,条約の非当事国も拘束する(ジェノサイド条約など)。
一般利益を体現する制度も,体制的効力を有する(パナマ運河条約など)。

  • 無効

限定列挙(46〜53条)。
錯誤無効主張は限定的に可(48条1項)。

★「国境線の錯誤(プレア・ビヘア寺院事件)」ICJ1962・6・15判決
<事実>
1904年にフランスとシャム(現タイ)が締結した国境条約は,シャム側に本来含まれるはずの寺院をカンボジア側に含めていることが判った。これが判ったのは1935年だが,このときにはなんらのアクションも行われず,二次大戦後にタイは寺院に軍隊を駐留させた。そこで,カンボジアがタイを提訴。
<判断>
地図に重大が問題があるのであれば,合理的期間内に,シャム当局がアクションをすべきであったのは明白なのに,シャム当局は,そのときもその後も多年にわたってそうしなかったのであるから,黙認したものとみなさなければならない。
<メモ>
禁反言原則の適用と考えられる。沈黙=黙認との考えだが,権利失効とも見れそう。

強迫=武力威嚇・武力行使による条約締結も無効(52条)。
国際社会の公序に反する条約も無効(53条)。

  • 改正等

改正は基本的に合意による。
条約の重大な違反があれば,違反国以外の当事国は運用停止・終了の根拠として援用できる(60条)。
事情変更原則もあり(62条)。

判例国際法

判例国際法

*1:法律事項を含むか,財政事項を含むか,または重要度が高くて批准を発効要件とするもの。憲法73条3号。政府統一見解