労働契約
● 意義
労働者が使用者に対して労務の提供を,使用者が労働者に対して賃金の支払いを約する契約。
≠雇用(民法) 民法上の「雇用」は使用者・労働者を対等な権利義務関係においていたが,使用者が労働者を搾取する例が相次いだ。そこで,労働者を保護するための契約上の原則や基準を設定したが,概念的にもすっきりしたほうがいい,ということで「労働契約」という概念が設定された。
- 特色
①人的・継続的契約関係
→信頼関係
②組織的労働性
→公平取り扱いの必要性
③契約内容の白地性
現場の状況が重要
④使用者の優越的地位
→法規制の必要
■ 基本的内容
- □労働力の提供・賃金の支払い
→労働指揮権
→命令服従義務
- ?業務命令にはすべて従う必要があるのか
- 合理的な範囲内では必要がある。その合理性は,命令自体の内容,命令を受けた労働者の状況,および命令に至った状況等を総合的に考慮して決せられる(昭和61年最判参照)。
★「業務命令」最判平5・6・11百選16
<事実>
原告は上司からあることで注意をされたが,それに従わなかったため,桜島の灰の除去を命令された。しばらくはこの命令に従っていはいたが,肉体的・精神的にきつくなってきたため,この命令を不法行為であるとして,上司らを提訴。
<判断>
請求棄却。
降灰除去作業は社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるとはいえない。
業務命令自体も殊更に原告に不利益を与えるものではない。
→就労請求権?
- ?労働者に就労請求権は認められるか
- 労働義務は「義務」であっても「権利」ではない以上,就労請求権は認められない。
- □人事権
↑労務管理権
↑企業の業務遂行
- □誠実・配慮関係
→安全配慮義務
→営業上の秘密保持義務
労働関係終了後の秘密保持 労働関係が継続している間は,付随的義務のひとつとして,労働者は使用者の営業上の秘密を保持する義務があることは認められているが,労働契約が終了しても尚,その義務が存続するかは問題である。 これについては,まず,就業規則等で明文で秘密保持義務がある場合には,その効力が認められる。が,明文がない場合には「労働契約の付随義務」として義務は終了するか,はたまた「信義則上の義務」として義務は存続するかに見解が分かれるが,法は前者をとる(不正競争防止法2条4項)。4 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
→競業避止義務
→使用者の名誉等を毀損しない義務
→職務発明(特許法35条)
第三十五条 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。
相当の対価 使用者は上記権利を有する変わりに,発明をした労働者に対して相当の対価を支払う必要がある(同条2項3項)。この算定は非常に困難であり,「知的財産法と労働法の交錯する解釈論・立法論上の難問」といわれる*1。
- □労働者の損害賠償責任
*1:81頁