白地手形

  • ●意義

手形要件の全部または一部をわざと空白にして流通におかれた手形。
本来的には無効な手形だが(77条1項),商慣習上認められている(10条・77条2項参照)。したがって,単に未完成手形であり,不完全手形ではない。完成は補充権の行使による。


  • ♪趣旨

♪①原因関係が未確定であることの補足
♪②原因関係は確定しているが,未完成なままでいるメリット


  • ▲要件

△①手形要件の欠缺
  ↑手形行為者の署名は必要
  欠缺はないが,有益的記載事項の欠缺がある手形:準白地手形
    →10条類推
△②補充権の授与
  手形外の約束等によって授与される:主観説

★「迷子の白地手形」最判昭31・7・20百選41
<事実>
Y会社は融資願いのためAに対し金額等を空白にしたまま「Y会社常務取締役B」の署名で手形を振り出した。この補充は,融資額が決定してからY会社の監査役Cによって行われる予定であった。が,融資は実現しなかった。にもかかわらずこの手形はA→D→E→Xと移転してしまい,そのうち,Eが金額を補充し,XがYに支払いを求めたのが本件である。控訴審では,Xが補充件留保の特約につき悪意であったことは立証されていないとして,Xの請求を認容。Y上告。
<判断>
上告棄却。
本件の場合,Yが補充権を純粋にAに与えたものではない点では通常の白地手形とは異なるが,それにしてもY会社においては約束に従って補充された場合には責任を負う意思はあったし,流通においたのだから,その違約を以って所持人に対抗できないことは手形法77条2項10条の法意に照らし明らかである。

★「未補充手形の取得者と10条」最判昭36・11・24百選45
<争点>
①未補充手形(小切手)の取得者に10条(小13条)適用はあるか
②補充権の時効
<判断>
①ある。けだし,本規定は手形(小切手)の流通を円滑にし,善意・無重過失の所持人を保護することにあるからである。
②補充権は形成権であり,また手形(小切手)の移転に随伴するものだから,商行為(商501条4号)であるため,5年(商522条)である。

とはいっても現実には金額が空欄なのに莫大な金額を期待するのは重過失であるとされることが多い。