当事者の意思による訴訟終了

  • ●意義

当事者が、処分権主義に基づき、裁判によらずに訴訟を終了させること(261〜267条)。


  • 種類

1)訴えの取り下げ
2)請求の放棄・認諾
3)訴訟上の和解


  • 訴えの取り下げ

・○意義
  :審判請求を撤回する旨の裁判所に対する意思表示
    =「やめます」


・△要件
  ・意思表示

?意思表示の瑕疵に民法の適用はあるか
ない。手続の安定性・明確性保護のため、訴訟行為は意思表示の瑕疵の影響を受けない。ただし、刑事上罰すべき行為によって取り下げがなされた場合、これを保護する必要性がある(338条1項5号参照)。このため、このような場合は例外的に訴えの取り下げは無効とすべきである。

  ・終局判決が確定していないこと(261条1項)
  ・被告の請求棄却判決を受ける権利を無視しないこと(2項)
  etc.


・▽手続
  ・原則として書面でなされること(3項)
  etc.


・◇効果
  (1)訴訟係属の遡及的消滅(262条1項)
    失効はするが、消滅はしない
      →後訴等で裁判資料の利用は可能
  (2)(終局判決後に取り下げがなされた場合の)再訴禁止(2項)
    ・「同一の訴え」

?同一の訴えは何を指すか
同一の訴えとは、主体である当事者、客体である訴訟物が同一である訴えのみならず、訴えの利益も同一であるものをいう。それは、再訴禁止の趣旨が、(1)裁判を徒労に終わらせたことに対する制裁、および(2)訴権濫用の防止にあるところ、新たな事情により訴えの利益が生じた場合、これらの趣旨が妥当しなくなるためである。
  • 請求の放棄・認諾

・○意義
  「放棄」:原告が請求に理由がないことを自認する裁判所に対する意思表示
  「認諾」:被告が請求に理由がないことを自認する裁判所に対する意思表示


・△要件
  1)当事者に係争利益の処分する自由があること
  2)条件が付されないこと
    ∵内容が不明確になる
    だったら和解
  3)(@認諾)法律上許されないものではないこと
    ex.公序良俗違反
  4)訴訟要件が具備されていること
    ∵放棄・認諾調書=本案判決の代用
  5)訴訟能力・代理権があること


・▽手続
  ・口頭の陳述(266条1項)
    +陳述擬制(2項)
  ・裁判所の要件調査→調書への記載(規67条1項1号)


・◇効果
  ・確定判決と同一の効力(267条)
    →(1)訴訟終了
    →(2)執行力・形成力
    →(3)既判力

?放棄・認諾調書に既判力を認めるのは,当事者の自主的解決に対する過大な干渉となる。請求の放棄・認諾には実体法上の効果を認めるだけでよいのではないか
だとすれば,敗訴必死とみた当事者が放棄・認諾をした場合,相手方は勝訴判決を得る機会を奪われる結果となり,手続的安定性が害される。法文も「確定判決と同一の効力」としているのに,既判力を認めないのは妥当ではない。ただ,放棄・認諾には裁判所が常に関与しているものではないから,この意思表示には民法の適用があり,錯誤などがあった場合には手続の続行を求めることができる(判例同旨)。
  • 訴訟上の和解

・○意義
  :訴訟係属中の当事者が,互譲して訴訟を終了させる旨の期日における同意

訴訟上の和解は,期日においてなされる点で起訴前和解(275条)と異なる。もっとも,この和解も裁判所で行われるため,訴訟上の効果が生じる(規169条,267条)。したがって,これらをあわせて裁判上の和解という。これらに対して,裁判外で行われる和解(裁判外の和解)は民法上の効果しかない(民法695条)。が,期日において両当事者がその内容を陳述すれば訴訟上の和解となる。


・△要件
  1)当事者に係争利益の処分する自由があること
  2)法律上許されないものではないこと
    ex.公序良俗違反
  3)訴訟能力・代理権があること

起訴前でも和解ができることとの均衡上,起訴後の和解だけに訴訟要件の具備を要求するのはおかしい。このため,訴訟要件の具備は要件ではない。が,確定判決と同一の効力が生じる(267条)ため,少なくとも(1)当事者の実在,(2)専属管轄に反しないことは要求される。


・▽手続
  ・両当事者の口頭による期日における陳述
    「僕たち和解します」
    「わかりました」→要件調査→調書への記載(規67条1項1号)
  ・書面受諾和解(264条)
    ↑遠い裁判所に行くのが面倒なときに
      AとB「和解しましょう」
      A「僕,遠いので書面出しておきます」
      B(期日に出頭して)「Aさんの書面を受諾します」
  ・裁定和解(265条)
    :当事者共同の申立てによって,裁判所が和解条項を定める
  ・併合和解
    :他の訴訟物も併合してする和解
    継続していない権利関係を併合するのは→準併合和解
  ・和解に変わる決定(275条の2)
  ・和解の試み
    裁判所はいつでも和解勧試ができる(89条)


・◇効果
  ・確定判決と同一の効力(267条)
    →(1)訴訟終了
    →(2)執行力
    →(3)既判力

?和解に対して既判力を認めるとその客観的範囲が不明確となる。請求の放棄・認諾は無条件でなされるためにその範囲が明確であるが,この点において和解は不都合である
だとしても既判力を認めなければ,いくらでも訴訟の蒸し返しが可能となる。法文も「確定判決と同一の効力」としているのだから,既判力は認められる。
?「確定判決と同一の効力」とは当事者の意思においてという意味であって,訴訟法上のものではない
それは法文に対して都合のよい解釈過ぎる。また,当事者の意思においてだとしても,裁判所は和解の要件を調査し,調書へ記載するのである。このような事情があるのに,訴訟法上の効果である既判力を認めないのは妥当ではない。
?仮にそのように解しても,和解に錯誤などがあった場合,後から無効などがまったく認められないとなれば,当事者にとってきわめて酷であり,憲法32条の裁判を受ける権利を実質的に剥奪する結果ともなりかねない。たとえば,和解のために差し出されたイチゴジャムがあんずジャムであった場合にも,錯誤無効が認められないとするのは妥当ではないのではないか
この事例のように,錯誤,すなわち実体法上の要件が欠けた場合,和解は無効である。実体法上の要件を既判力の根拠にするのは,確かに背理であるとも考えられる。しかし,既判力の性質そのものと,既判力の原因たる問題は区別されて考えるべきである。
?では,和解が無効であるとした場合,どのような主張方法があるか
和解が無効であるとすると,訴訟の終了という訴訟自体の問題となるため,そのような問題は当該訴訟で解決すべく,期日の指定を申し立てるべきである。ただし,訴訟上の和解には私法上の効果も観念されるから,別訴の提起を否定すべきではない。つまり,主張方法は複数存在する(競合説)。
?和解が解除された場合はどうか
別訴によるべきである。和解の解除は新たな事情が発生したために生ずる,旧訴とは別個の紛争である。
  • cf.

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