文書偽造罪
● 意義
○狭義:不正な文書を作出する罪(154〜161条の2)。
有形偽造:作成権限のない者が文書を作成すること。
=(狭義の)偽造
→154条(詔書偽造)
→155条(公文書偽造等)
→159条(私文書偽造等)
無形偽造:作成権限のある者が真実ではない文書を作成すること。
=虚偽文章の作成
→156条(虚偽公文書作成等)
→160条(虚偽診断書等作成)
○広義:狭義+偽造文書を行使する罪。
→158条(偽造公文書行使等)
→161条(偽造私文書等行使)
○その他
→157条(公正証書原本不実記載等)
→161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)
- ♪保護法益
♪公共の信用→文書の真実性
▲ 要件
- 総論
△文書
社会的機能+信用が必要
∴⊃コピー(最判昭51・4・30)
⊃ファックス(広島高岡山支判平8・5・22)
△偽造
誤認させるに足る外観を備えることを要する(最判昭52・4・25)
△名義人
同一性の齟齬を生じさせれば足りる
実在する必要はない(最決平11・12・20)
同姓同名でもありうる(最決平5・10・5)
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通称使用もだめ(最判昭59・2・17)
ただし,状況と(通称認知の)程度による。
△作成権限
真正権限者が許しても,社会通念上許されなければ作成権限は認められない。
形式上ではなく,実質上の作成権限を判定。
★「虚偽公文書作成罪の間接正犯」最判昭32・10・4百選Ⅱ89
<事実>
公務員である被告人は,公文書の作成権限のある公務員Aの補佐を,その職務としていたが,融資を得る目的で,Aの職務の補佐をするという地位を利用し,Aをして公文書を作成せしめた。
<判断>
156条の虚偽公文書作成罪は,公文書の作成権限者たる公務員を主体とする身分犯だが,作成権限者たる公務員の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が,その地位を利用して権限ある者に,内容虚偽の公文書を作成させた場合でも,間接正犯の成立がある。
<整理>
私人には間接正犯の成立がない(最判昭27・12・25。∵157条)。
- 各論
△公文書
職務執行の範囲内で作成されるもの(大判明45・4・15)
⊃郵便日付印(大判昭3・10・9)
△公正証書原本
権利・義務にかかわる公正証書の原本
⊃住民票(最決昭48・3・15)
△私文書
権利・義務・事実証明に関するもの
⊃大学入試の答案(最決平6・11・29)
⊃履歴書(最判平11・12・20)
★「郵便送達報告書は私文書か」最判平16・11・30
被告人は,金員に窮し,支払督促制度を悪用して叔父の財産を不正に差し押さえ,強制執行することなどにより金員を得ようと考え,被告人が叔父に対して6000万円を超える立替金債権を有する旨内容虚偽の支払督促を申し立てた上,裁判所から債務者とされた叔父あてに発送される支払督促正本及び仮執行宣言付支払督促正本について,共犯者が叔父を装って郵便配達員から受け取ることで適式に送達されたように外形を整え,叔父に督促異議申立ての機会を与えることなく支払督促の効力を確定させようと企てた。そこで,共犯者において,2回にわたり,あらかじめ被告人から連絡を受けた日時ころに叔父方付近で待ち受け,支払督促正本等の送達に赴いた郵便配達員に対して,自ら叔父の氏名を名乗り出て受送達者本人であるように装い,郵便配達員の求めに応じて郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に叔父の氏名を記載して郵便配達員に提出し,共犯者を受送達者本人であると誤信した郵便配達員から支払督促正本等を受け取った。なお,被告人は,当初から叔父あての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意図であり,現に共犯者から当日中に受け取った支払督促正本はすぐに廃棄している。
以上の事実関係の下では,郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は,同人名義の受領書を偽造したものとして,有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当であるから,被告人に対して有印私文書偽造,同行使罪の成立を認めた原判決は,正当として是認できる。
△電磁的記録
キャッシュカード(東京地判平1・2・22)
はずれ馬券の磁気ストライプ(甲府地判平1・3・31)
前田雅英「テレホンカードは有価証券変造として処理されているから,アンバランスである」
- cf.