背任罪

●意義

他人のための事務処理者が,図利・加害目的で,任務違背行為をし,財産上の損害を加える罪(刑法247条)。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/breach_of_trust/

♪財産管理の信頼
   ↑にもとづいて権限範囲を判断


▲要件

1 △他人のための事務処理者(身分)
   要信任関係
   要裁量権
   一時的な仕事でもOK

★「抵当権設定手続は誰の事務?」最判昭31・12・7百選Ⅱ63
<事実>
被告人は自己所有の家屋に根抵当権を設定し,その抵当権設定登記をする前に,他の根抵当権を登記した。
<判断>
抵当権設定者は,抵当権の設定登記が完了するまでは,抵当権者に協力任務を有することはいうまでもない。したがって,抵当権設定手続は「他人の事務」である。


2 △図利・加害目的
   利益⊃間接的利益=身分上の利益
   (図利・加害の点について)意欲・積極的認容は要しない(最決昭63・11・21)

しかし,目的については本人(or相当関係者)のためであることを要する(エゴイズム要件)。この要件に,加害要件が関連してくるため,結局相関関係になる。
x=誰のための認識
y=どの程度の損害の認識
ex.蛸配当=x(会社・銀行・自分のために)y(確定的損害の認識)
   →信頼は一時的に維持されるが,結局損害は発生する。
ex.不良貸付け=x(会社・貸付け先・自分のために)y(回収できるかなあ・・・)
   →判例も分かれる


3 △任務違背
   ・信任行為
      信任内∩権限内
   ・背任行為
      信任外∪権限外
   ⊃不作為

★「不正融資の“借り手”責任」最決平15・2・18重判刑法7
<事実>
A会社の代表取締役Fは,自車の経営状況が悪化し,無担保状態であるにもかかわらず,B社の貸付け担当Kに金融を請い,迂回融資の方法で融資を受けた。争点は借り手であるFの特別背任罪の成否。
<判断>
FはKに対する支配的な影響力もなければ,融資を積極的に働きかけた状況もなかったが,Kらの任務違背と,B社の財産上の損害の認識を有し,A社の利益を図る目的もあって,B社の迂回融資に協力したのだから,Kらの特別背任行為に共同加功したとの評価を免れない。
<整理>

第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

FがA社の利益を図るのは当たり前,だから背任罪(共同)の成立は制限すべき(下級審)との考えをゆるめた判断が特徴。が,本件では従来の不正貸付けの発覚をおそれたKらの弱みをFが積極的に利用した点が特徴的・・・事例判決?


4 △財産上の損害
   経済的見地において判断
      →うべかりし利益,信頼,ブランド・・・